卒業シーズンに観たい青春映画3選
卒業式、強制的に放り出されるような心細さを感じるのか、新たな環境に胸を躍らせているのか。いずれにしても青春の終わりと、新たな青春の始まりである。
卒業シーズンの今だから観たい青春映画3選を紹介する。
『青春デンデケデケデケ』

大林宣彦監督が撮った、香川県観音寺市の、なんてことのない高校生たちの話だ。
この映画がいいのは、「何も起こらない」ところだ。
主人公のちっくんは、ある日ラジオから流れてきたベンチャーズの「テケテケ……」という音に撃ち抜かれる。
だが、彼はその後、超能力に目覚めたりはしない。親友が宇宙人に乗っ取られることもなければ、淡い恋心を抱く彼女が不治の病で倒れることもない。
ただ、クラスメイトの女の子と二人きりで海へ行き、楽器を買うために泥臭いアルバイトをし、ようやく組んだバンドでステージに立つ。
それだけのことなのに、画面の中の彼らは、まるで宇宙の真理でも掴んだかのように輝いている。
「特別なことは何も起こらない。けれど、すべてが特別である」
これこそがティーンエイジャーにのみ許された、理不尽で幸福な特権なのだ。
『青い春』

松本大洋の原作を豊田利晃が撮った、屋上のカラスたちの物語だ。
ここで描かれる不良たちは、学ランを不必要に着崩したりはしない。
遠目に見れば、どこにでもいる普通の生徒だ。だが、彼らの内側には、出口のない猛烈な「閉塞感」が渦巻いている。
九条と青木。二人が抱える「ここではないどこかへ行きたい、けれどどこにも行けない」という絶望。
それは決して不良だけの特権ではなく、あの年代の誰もが、教室の隅で、あるいは下校路の自販機の前で、ひっそりと抱えていたものだ。
芸人のみなみかわ氏と大島育宙氏のポッドキャスト「炎上喫煙所」でこの映画について語っている回がある。
映画を観た後に聴くと2度美味しいのでお勧めだ。
『ホールドオーバーズ おいてけぼりのホリデー』

舞台は1970年のアメリカ。
クリスマス休暇、誰もいなくなった寄宿学校。嫌われ者の歴史教師と、家庭に事情を抱えた生意気な学生、そして息子を亡くしたばかりの料理長。
観ていて思うのは、「十代の悩みなんて、大人になっても消えやしない」ということだ。
むしろ、大人になればなるほど、悩みは多様化し、複雑な結び目になって僕らの足元に絡みついてくる。
けれど、この映画は教えてくれる。
出自も年齢もバラバラな、孤独な人間たちが、それぞれの痛みを抱えながらも、ほんの少しだけ互いの肩を貸し合うことができるんじゃないか、と。
「おいてけぼり」にされた者同士だからこそ通い合う、人肌の温もり。
