夢と目標のあいだ
長男が高校3年生になった夏休み明けのこと。
進路についての三者面談の席で、先生が問いかけた。
「文学部志望なんだね。専攻は?どんな勉強がしたいの?」
わたしは驚いた。
そこまで聞く?
高校生がそんな深く考えてないでしょ。
しかし、息子は迷うことなく即答した。
「現代文学です」
えっ。
この時まで知らなかった。
ごめん。
情けないけど、私は勝手に
「理系が苦手なので文学部を選んだ」
ぐらいに軽く思っていた。
それで思い出したのは はるか昔
高校3年生だった自分。
「大学は文学部へ行きたいなあ」
ほんわかと夢見ていた。
でも、その淡い夢は父の現実的な一言で霧散した。
「金がないから。国立で。
あ、あと家から通えるところで。」
家から通える国立大学には
文学部がなかった。
もしあの時、
私も息子のように
はっきりとしたビジョンを持っていたら。
きちんと希望を伝えていたら。
「文学を学ぶ」という夢がかなっていたかもしれない。
けれど。
今なら分かる。
話を聞いてくれない父ではなかった。
ただ父には見透かされていたのだ。
私の「夢」が、明確な「目標」ではなかったことを。
長男は現代文学を専攻し、
目標も夢も叶えつつある。
このご時世、
文学を学ぶ意義を見出すのはなかなかに大変なことだろう。
でもその道に邁進する背中を見て、
昔、手が届かなかった夢の欠片を
ちょっと思い出したりする。

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