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今月で閉館するサツゲキにて。映画「無名」を見る(※ネタバレあり)。

もくじ

0.はじめに
1.ストーリー
2.出来事の順番
3.当時の政治状況
4.まとめ

0.はじめに


前身がスガイディノス札幌劇場。ボーリング場やゲームセンターなどが入館するアミューズメントビルにあって、複数階を占める映画館だった。地元資本で、その歴史は古い。2019年、老朽化によるビルの解体が決まり、いったん閉館する。

2020年に現在の狸小路5丁目に場所を移し、サツゲキとして復活する。28席から200席まで、4スクリーンを擁するミニシアターであった。
途中資本関係が入れ替わったりしながら、今月で閉館に至る。

今月は、サツゲキクロージングセレクションとして、過去に上映した作品をリバイバル上映している。

特集として、白石和彌監督作品やベイビーわるきゅーれシリーズ、ジャンクヘッドシリーズを、単発の作品として、「女神の継承」、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」などなどを上映する。

さて最後の鑑賞に選んだのは、「無名」、日中戦争時代に暗躍するスパイを描く、重厚なノワール。2024年公開の中国映画。一回見ただけでは、その内容が理解できない。

1.ストーリー


中国・汪兆銘政権の政治保衛部に所属するフーは、中国共産党の秘密工作員だった男ジャンの身辺調査を行う。フーは中国国民党に転向するというジャンから共産党幹部の情報を聞き出すことに成功する。1941年、上海に駐在する日本軍スパイのトップ・渡部は、政治保衛部の主任となったフーやその上司タンと日本料理店で戦局について話す。フーの部下として働くイエは、友人ワンとともに諜報活動に従事していたが……。

映画.comより

このあらすじは、映画で描写される出来事をその順番に従って記述している。
なんだかよく判らない。人物の関係もよく判らない。原因はふたつある。

・展開が時系列ではない
・当時の政治状況の理解が必要である

以下このテーマに沿って感想を綴る。


2.出来事の順番


冒頭の幾つかのシーン。これが事の発端かと思う。だが違う。
例えば、中国共産党員ジャンの取調べに、フー(トニー・レオン)があたる場面。これは実はクライマックスである。正確にはクライマックスの導入部分である。時系列で言えば最後のほう。
起承転結の「起」ではなく「転」から語り始める。

ジャン(同じ名前だが女性)が国民党のスパイであることが発覚し、やはりフーの取調べを受ける。汪兆銘政権の命により彼女は処刑されようとしている。だがフーは彼女を逃がす。その見返りとして、彼女は上海の日本人要人リストを渡す。
これが起点となる。ここから出来事が連鎖して起きる。

なぜこのように時系列を乱すのか。
印象を強め、人を映画に引き付ける引力の作用を期待するから。
しかし逆に斥力となる場合もある。構成の巧みさが重要である。

3.当時の政治状況


描かれるのが、フーの属する、汪兆銘政権の政治保衛部。ここにフーやタン、イエ(ワン・イーボー)、ワン、そして日本軍人の渡部も属している。
当時の中国には大別して、3つの勢力があった。蒋介石の率いる国民党、中国共産党、そして汪兆銘政権である。

この3勢力は、近づいたり、遠ざかったりを繰り返す。激しく戦い、暗殺も辞さない。

汪兆銘はもともと国民党の出身であったが、蒋介石と袂を分かつ。政治的立場もその時々で変わった。この映画に描かれる、1937年から46年にかけては、日本と戦うのではなく、和平を目指していた。だから日本に融和的な、あるいは傀儡政権としての立ち位置にある。
時に反発しながらも、日本の特務機関出身の渡部と行動を共にする。
観る者に、読み解く努力を求める。

4.まとめ


いうまでもなくビッグネームであるトニー・レオンと、この頃は気鋭の新人だったワン・イーボーの共演。目力の強さ。
人を惹きつける、当時の上海を再現した美しい映像。
記憶に残る魅力的な一本だった。

クロージングラインナップを見ると、館はどのような映画に公開の場を提供してきたのか判る。この「無名」もそうだが、この劇場がなければ札幌で上映できなかっただろう。
とても残念だ。

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