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ソウルを歩く ③デジタルサイネージと路地裏

ぐずついた一日だったが、夕方になってようやく雨も上がった。ソウル駅前に降り立つ。レンガ造の旧ソウル駅舎やロッテマートなど、初めての韓国訪問にもかかわらず、既視感のある景色。

見知らぬ建物が目を引いた。ソウル駅に向かって、そびえ立つ巨大な茶褐色の壁。淡い光の線で描かれた女性の姿。それが動いている。

ビルの壁面全体をスクリーンに仕立て、動画を表示している。一体、どのような仕組みなのか。よく見ると窓と窓の間の狭い壁面にLEDを組み込んでいるようだ。


SEOUL SQUAREビルのメディアアート

調べると、SEOUL SQUARE という名称で、2009年に建てられた飲食店やオフィスが入居する雑居ビルだ。だから新しい建物ではない。
暗くなると、より鮮明な映像も映し出す。メディアアートという名称で、過去にはパブリックビューイングとして、サッカー中継も行った。YouTubeにも動画が上がっているが、どれも投稿が古く、視聴数も少ないような。

これで驚いていては、いけない。

ソウルを歩くと、いたるところにデジタルサイネージがあって、鮮やかな色彩と目を引く動きを流している。

鐘路タワー
龍山駅構内

こんな記事がある。


韓国には「屋外広告自由表示区域」という指定がある。
端的に言えば「デジタルサイネージ広告特区」か。
従来はソウルの江南(カンナム)の一部のみに限られた指定だった。ところが昨年、ソウルの明洞観光特区、光化門広場、釜山の海雲台海水浴場が追加された。さらに来年、地域はまだ未定だが、追加指定する動きがある。

さらに、規制の緩和だけではなく、サイネージの導入費用に対して補助金が出るようだ。経済成長戦略の中に位置付けられている。

LEDデバイス、それを作動させる新たな仕組みなどの開発を促し、海外市場も視野に入れた産業を創出する。ニューヨークのタイムズスクウェアに凝らして設置されるサイネージは、地域を新たなランドマークとする。「映え」スポットを求める観光客を呼び込み、新たな広告需要を開拓し、好調な経済循環をもたらす、といったところか。

ただでさえ表通りにはデジタルサイネージが目立つ。これでもか、と空間は広告で埋め尽くされる。ディストピアなのかどうかはさて置くとしても、ブレードランナーに描かれる近未来的な世界である。

その一方、表通りから通りを一本、路地裏に入ると、そこには懐かしい光景が広がる。

明洞夜市、広蔵市場などの有名な屋台だけでなく、一般には名も知られていない屋台街がある。

屋台街

泊まったホテルの近くの通りでも、陽が傾く頃には、屋台やテーブルが並び、食欲をそそる香りをあたりに漂わせる。
眼前に広がる、夕陽を浴びたその光景に、心惹かれぬ者はいないだろう。堪らず足を運ぶ。

鶏の足と野菜を炒めたものを注文した。もちろん初めて食べる。軟骨のようなコリコリとした食感と甘辛い味付けにビールが進む。

あたりは毎夜、遅くまで酔客たちで賑わっていた。

近未来的な表通りと、日本で言えば「昭和」を引きずるような、路地裏の屋台街。月並みな感想だが、その落差はカオスとなって、ソウルの魅力を増幅させる。

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