日本は何を失い、何を取り戻そうとしているのか
最近、社員教育やキャリア教育、就業規則について考えていたら、もっと大きなテーマにたどり着きました。
私たちはいつから、
「会社は利益を最大化するためにある」
と思うようになったのでしょうか。
そして、それは本当に日本がもともと持っていた考え方だったのでしょうか。
日本的経営は古かったのか
戦後の日本企業は今とはかなり違いました。
終身雇用。
年功序列。
企業別組合。
社員旅行。
社宅。
福利厚生。
今の若い人から見ると、少し不思議な世界に見えるかもしれません。
もちろん問題もありました。
しかし、会社は単なる利益を生み出す装置ではありませんでした。
社員とその家族の生活を支える共同体でもあったのです。
今なら、
「非効率だ」
と言われるかもしれません。
でも、その仕組みで日本企業は世界を席巻しました。
自動車。
家電。
半導体。
世界中が日本企業を研究していた時代があったのです。
大前研一さんのせいではない(笑)
1990年代。
バブルが崩壊します。
そしてグローバル化が進みます。
日本企業は世界市場で戦うことになります。
この頃から、
選択と集中。
成果主義。
企業価値。
株主価値。
ROE。
そんな言葉が増えていきました。
大前研一さんもその時代を代表する論客の一人でした。
なので、
「全部、大前さんのせいだ!」
と言いたくなる気持ちも少しあります(笑)
もちろん違います。
時代そのものがそういう方向へ向かっていたのです。
日本企業は、
「アメリカ型経営を学ばなければ生き残れない」
と思った。
そして一生懸命学びました。
真面目な日本人らしく。
東インド会社から続く流れ
もっと大きな歴史で見ると、
株式会社の原型の一つとされる東インド会社にたどり着きます。
東インド会社は宗主国と出資者の利益を最大化するための組織でした。
組織を作る。
人を動かす。
利益を生み出す。
その目的は明確です。
宗主国と資本家の利益です。
さらに20世紀後半になると、
ミルトン・フリードマンは
「企業の社会的責任は利益を増やすことである」
と主張しました。
かなり乱暴に言うと、
経営者は社会活動をするな。
社員の幸せを考えるな。
株主から預かったお金を増やせ。
という思想です。
そして株主資本主義が世界に広がっていきます。
会社は株主のもの。
経営者は株主の利益を最大化するために存在する。
そんな考え方です。
奴隷が労働者になり、宗主国が株主になったのか
少し極端な言い方をすると、
歴史の中で奴隷は労働者になり、
宗主国は株主になったようにも見えます。
もちろん同じではありません。
現代の労働者は自由意思で働いています。
株主も宗主国ではありません。
しかし、
「誰かの利益を最大化するために組織が存在する」
という考え方だけを見ると、
どこか似ている部分も感じます。
昔は宗主国の利益のため。
その後は資本家の利益のため。
そして現代は株主価値最大化のため。
私たちは長い間、
それが会社というものだと信じてきました。
そして日本人は特に律儀です。
海外で生まれた理論を真面目に学びます。
真面目に実践します。
真面目に頑張ります。
だから株主資本主義も一生懸命学びました。
時には、自分たちがもともと持っていた価値観を忘れるほどに。
ところが世界は別のことを言い始めた
面白いのはここです。
日本は30年かけてアメリカ経営学を学びました。
ところが最近になって、
世界は別のことを言い始めています。
人的資本経営。
パーパス経営。
ステークホルダー資本主義。
共感資本主義。
B Corp。
地域循環経済。
小さな経済。
利益だけでは持続しない。
株主だけを見ていても幸せになれない。
そんな議論が増えてきました。
まるで世界が、
株主資本主義を一周して戻ってきたようにも見えます。
日本が失ったもの
私は昔の日本が正しかったと言いたいわけではありません。
終身雇用にも問題はありました。
年功序列にも問題はありました。
しかし、
社員を育てること。
長い目で見ること。
地域との関係を大切にすること。
人と人との信頼を重視すること。
そうした価値観まで捨てる必要があったのでしょうか。
私は少し疑問です。
日本はアメリカ経営学を学ぶ過程で、
効率を手に入れた代わりに、
何か大切なものを失ったのかもしれません。
日本は何を取り戻そうとしているのか
最近の人的資本経営やステークホルダー資本主義を見ていると、
私は新しい経営理論には見えません。
むしろ、
昔から日本企業が持っていた価値観を現代的な言葉で説明し直しているように見えます。
社員を大切にする。
顧客を大切にする。
地域を大切にする。
信頼を大切にする。
そして利益は、その結果として生まれるもの。
もちろん昔に戻る必要はありません。
戻れもしません。
ただ、日本は世界で最も早く人口減少と少子高齢化に直面しています。
だからこそ、
これまでの大量生産・大量消費・大量雇用を前提とした仕組みが通用しなくなっています。
私はむしろ、
日本は世界に先駆けて次の社会を試しているのではないかと思っています。
週5日フルタイムだけが正社員ではない。
会社だけが居場所ではない。
地域にも居場所がある。
仕事だけではなく挑戦もある。
私が取り組んでいる短時間正社員もそうです。
新宮CoCoスクエアもそうです。
利益を最大化するための仕組みというより、
人が活躍できる場所を増やすための仕組みです。
昔の日本に戻るのではありません。
アメリカ型経営を否定したいわけでもありません。
ただ、
人口が減る社会の中で、
人が幸せに働き続けるにはどうしたらいいのか。
その問いに対して、
日本は世界より少し早く答えを探し始めているように見えます。
もしかすると日本は、
失ったものを取り戻そうとしているのではありません。
次の時代に必要なものを、
世界より少し早く思い出そうとしているのかもしれません。
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