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妊娠中、最もつらかったのは“かゆみ”だった


第二子を出産して、もうすぐ2ヶ月を迎える。今回の妊娠出産で一番つらく、乗り越えるのに苦労したのは、妊娠によって引き起こされた皮膚炎だ。

はじめて痒さを感じたのは、妊娠中期のころ。お腹や背中が痒く、ポツポツと湿疹ができた。調べると、お腹が大きくなるにつれて皮膚が伸び、乾燥によって痒くなることがあるらしい。ただ、このころは少し痒い程度で睡眠や日常生活に支障は出ず、気づかないうちに治っていた。

再び痒さが現れたのはそれから5ヶ月くらい経ったころ。妊娠8ヶ月、少し暑くなり出した5月のことだった。

はじめは、また乾燥で痒くなったのだろうと、さほど気にしていなかった。でも痒さは一気にエスカレート。2、3日後にはお腹や背中だけでなく、手や脚にも広がり、痒くて眠れなくなった。

皮膚科では、「妊娠性掻痒」と「汗疱」と「多形滲出性紅斑」と診断された。妊娠中期のように、乾燥によるものもあれば、ホルモンバランスが乱れたり体質が変わったりして、もともと持っていたアトピーが悪化したものあると言われた。もともとアトピーだった覚えはないが、妊娠は人の体質をこれほどに変えてしまうのだと実感した。

妊婦でも服用できるステロイドの薬をもらったが一向によくならならず、睡眠剤を飲んでも痒さが勝って眠れなかった。上の子の寝かしつけとともに一度は寝落ちするものの、2時間後には痒さで目覚めてしまう。一度掻いてしまったら終わりで、1箇所掻いただけで身体のあちこちが痒くなる。深夜に何度も起きてシャワーを浴び、眠りにつこうと頑張った。それでも眠れるのは稀で、2時間眠れたらラッキーだった。

起きている時間、ずっと痒くてつらかった。仕事中、リモート会議中、食事中、ずっと掻いていた。身につけるものは綿100%じゃないと痒さが増し、シーツや布団、服、下着などすべて綿のものに買い替えた。少しでも体温が上がると痒さが悪化するので、外出時は保冷剤がマスト。大好きなお風呂や温かいドリンクも封印した。連日の寝不足により、頭痛や吐き気などの不調も出てきて、早めに産休に入らせてもらった。

一番つらかったのは、3歳の娘との体の接触だ。肌に何かが触れるだけで痒かったので、娘を膝の上に乗せるのも、寝かしつけ中にハグするのも苦痛だった。急に娘が抱きついてきたときは、反射的に避ける動きをしてしまい、娘に何度も悲しい顔をさせた。

それでも、娘に対して申し訳なさを感じなかった。毎日の寝不足で心身ともに限界を感じていた私は、自分が生きることで精一杯。何をするにも気力が湧かず、食欲もなくなり、毎日泣いていた。娘を見る目は、目が合っているかもわからないような死んだ目をしていたと思う。

そんな精神状態だったから、娘に対して申し訳なさではなく、「触らないで」「なんでわかってくれないの?」と彼女を責めることばかり考えていた。私の変わりぶりを感じて、しだいに娘は「ママがいい」から「パパがいい」と言うようになり、私が近づくと「ママ嫌」「あっち行って」と拒否するようになった。

夫と娘が出かけている間に、写真共有アプリで過去の写真を見ると、家族みんなで上野動物園に行った時の写真が目に入った。笑顔で家族とピースする自分を見て、このころの自分に戻れるのだろうか、このまま症状が治らなかったらどうしよう、と涙が止まらなくなった。

夫に心配してもらえなかったのもつらかった。心配して育児や家事を率先してくれていたのかもしれないけれど、私が欲しかったのは労いの言葉だ。「症状どう?」「大丈夫?」という、たった数文字の言葉でよかった。

夫も、仕事や家事、育児に精一杯で余裕がなかったのだと思う。それはわかっている。わかっているけれど、妊娠出産をひとりで抱えているようで本当につらかった。(後に私が大爆発して、気にかけてもらえるようになったのだけど話が長くなるので割愛)

出産したら痒さはなくなるというネットの書き込みや、同じく痒さに悩まされた知人の言葉だけを頼りに、妊娠後期を耐えていた。

そんななか迎えた陣痛と出産。陣痛中は痒さはほとんど感じず、ようやく治ったのだと思った。

だけど、現実はそう甘くなかった。痒みを感じなかったのは出産中だけで、出産を終えるとまた痒くなった。おそらく、痒さを忘れるほど緊張や集中していたのだと思う。

出産するとその後1日は、シャワーができない。それも相まって、体中が余計に痒くなった。さらに新たな症状として、足の裏と指、デリケートゾーン、頭皮、顔の痒みも加わった。本当に文字通り「身体中」痒かった。

娘が描いた私の絵。「ママ、ぶつぶつあるから」とご丁寧に全身に湿疹を描いてくれた。

とくにやばかったのが、足の裏。患部を中心に水泡ができ、それが巨大化してサッカーのスパイクのような足になった。水泡が破けてしまうとくっさい臭いの汁が出てきて、見るにも耐えない足だった。(汚くてすみません)ステロイドの塗り薬で水泡はかさぶたのように硬くなったが、そのかさぶたがひび割れを起こし、今度は歩くたびに針に刺されるような痛さが襲った。

出産後数日は、もう治らないのではないかと絶望していたが、それでも症状はゆっくりと回復に向かった。お腹や背中など、先に痒くなった部分から改善していき、産後2ヶ月を迎える今は、痒いのは足の裏と指だけになった。食事後や入浴中など、体温が上がったときに体を掻いてしまうこともあるが、妊娠中と同じように掻いても当時のように広がったりすることはない。やっぱり妊娠中は異常だったのだなと思う。我慢していたホットドリンクも飲めるようになり、綿100%以外の服も着れるようになった。

睡眠も徐々にとれるようになった。痒さがマシになったのもあるが、生まれてきた赤ちゃんが可愛すぎて、自律神経が少し整ったのだろう。今でも痒さが気になり寝られないこともあるが、赤ちゃんの隣で寝息を聞いていると知らないうちに寝られる。

そして一番我慢させていた娘との時間も取り戻しつつある。先日は2人だけでお祭りや図書館にも行った。「ママがいい」も増え、それはそれで疲れるのだけれど、もとの関係に戻れて何より嬉しい。

5月半ばに症状がひどくなってから3ヶ月。完治はしていないけれど、明らかに症状は改善していて、精神状態も元に戻った。もう来ないかもしれないとも思った家族みんなで笑い合う日々も、当たり前のようにある。

過去の自分に何か伝えるとしたら、とにかくよく頑張ったと伝えたい。そして、こんなにも可愛くて愛おしい赤ちゃんと出会わせてくれてありがとうと感謝を伝えたい。体に残る掻き跡を見るたびに、本当によく生き抜いたと誇りに思う。

そして驚くことに、もう妊娠したくないと思うほどつらかったのに、また子どもを授かりたいと思ってしまう自分がいる。それほど赤ちゃんって可愛くて愛おしいのだ。こんなに可愛い生き物と出会えるなら、あのつらさも耐えられると思ってしまうからおそろしい。

おそらくこの先、目の前の育児でいっぱいいっぱいになり、妊娠中、必死に生きていたことなど忘れてしまうのだと思う。

だからこそ、あのとき自分が命をかけて頑張っていたこと。そしてその先に、尊い命が生まれたことを、ここに残しておきたい。

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