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「動きにくさ」は年のせい?海外ウェビナーで衝撃を受けた、自閉症とパーキンソニズムの意外な関係と私たちの役割

最終更新:2025年12月 
 ゴールデンウィーク皆さんゆっくりと過ごせたでしょうか?私は家族との時間をゆっくり過ごすことができてとても有意義なものとなりました。何かゆっくり物事を考える時間が持てることは重要なことだと考えます。現場支援者にとっても日ごろ、多くの肉体的な疲労だけではなくて、精神的な疲労をとることになり、大切なことかもしれません。虐待がおこる要因の解消としても職員の余裕やゆとりはとても重要だと考えます。また、業界としての成熟を考えたときにも、現場職員がすり減っていくことも加味した仕組みになればいいなぁと思いました。心の洗濯ができるように、皆さんもどうかご無理のないようにしてくださいね。

 今回も自閉症と共に老いていくことについて深堀をしていきます。前にThe INSAR Institute webinars 2024のシリーズテーマ「自閉症における老化」の中でTEACCH Autism Program🄬のローラクリンガー博士が携わっておられるプロジェクトの内容からアプローチしました。その中に報告のあったプロジェクトとして、ジョージ・ワシントン大学のグレゴリー・ウォレス博士が主導したパーキンソン病についての内容です。同博士は、ASK研究のプロジェクトリーダーの1人でもあります。この研究では、自閉症や知的障害のある55歳以上の成人の2014年から2016 年のメディケアおよびメディケイド請求データを活用しました。

 今回はYoutubeの中で、この博士のウェビナーを発見したのでシェアします。グレゴリー・L・ウォレス博士が、自閉症者の加齢に伴うリスク(例えばパーキンソニズム)とレジリエンス(代償能力)に焦点を当てていました。これらのリスク領域とレジリエンス領域が、自閉症者の心身の健康やQOLにどのような影響を与えるかを明らかにしようとしています。動画や資料が公開されていますのでよかったらアクセスしてください。

 ちなみに、今回話題に出てくる「SPARK」という団体について、公式サイトの情報を参考に簡単にご紹介しておきます。

SPARK(Simons Powering Autism Research)とは
自閉症の研究を通じて理解を深めることを使命とする、当事者・家族・研究者からなるコミュニティです。「研究がなければ、私たちはただ推測するしかない」という理念のもと、原因特定や効果的な支援情報の提供を行い、自閉症の人々の生活改善を目指しています。

 今回の記事は、ジョージ・ワシントン大学のグレッグ・ウォレス准教授による講義を拝聴し、私自身が現場の支援者として特に重要だと感じたポイントを整理し、考察を加えた『学びのシェア』です。講義の全訳や公式な記録ではありませんが、日本国内ではまだ情報の少ない『自閉症と老化』について、皆さんと一緒に考えるきっかけになれば幸いです。素晴らしい知見を提供してくださった先生への敬意を込めて、私なりの視点で紐解いていきたいと思います。今回は4014文字でした。

1.未知の領域:「自閉症」と「老い」

 今回、私が学んだテーマは「自閉症の成人におけるリスクとレジリエンス(回復力)」です。特に、年齢を重ねることで生じる「パーキンソン病」や「認知機能の低下」といったリスクについて、現場感覚としても非常に考えさせられる内容でした。レジリエンスは、疾病などの健康関連の逆境 に直面した際の生活機能の回復と維持を促進する認知的・心理的特徴。簡単には回復力や耐性などと言われることがあります。
 まずハッとさせられたのが、背景のお話です。アメリカで自閉症が独立した診断名としてDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)に載ったのは1980年のこと。つまり、子どもの頃に診断を受けた方々の多くが、ようやく今、中高年期を迎え始めたところなのです。

「だからこそ、老化と自閉症に関する知識はまだ限られている」

 ウォレス准教授のこの言葉に、これから私たちが直面する課題の大きさを感じました。アメリカでは45歳以上の自閉症の方が300万人以上いると推計されており、日本でもこれから急速に注目される分野であることは間違いありません。2022年にデイビッド・メイソン氏らが発表した論文から、老化と自閉症に焦点を当てた研究のごくわずかな数を示す図をご覧ください。

2.「動きにくさ」の正体は? パーキンソニズムという視点

 講義の核心は、「パーキンソニズム(パーキンソン症状)」との併発リスクについてです。ここで興味深かったのは、単なる印象論ではなく、神経学的な評価尺度やスクリーニングツールを用いてリスクが検証されている点です。講義で紹介された具体的な研究とツールを整理してみます。

1.UPDRSを用いた調査(Starkstein & Piven, 2015)
まず紹介されたのが、パーキンソン病評価のゴールドスタンダードとされる『UPDRS(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale:統一パーキンソン病評価尺度)』を用いた研究です。この研究では、40歳以上の自閉症成人のうち、25〜32%(サンプル群による違いあり)がパーキンソン症状の基準を満たしていたそうです。これは一般的な同年代の有病率と比べて極めて高い数字です。

2.SPARKでの大規模調査と「PSQ」
さらに、ウォレス准教授自身のチームが行ったSPARKを通じた調査(40歳〜83歳の自閉症成人279名が対象)では、より簡易的な『PSQ(Parkinson’s Screening Questionnaire)』という6項目のスクリーニング質問票が使われました。

現場の私たちも、以下の6つの視点は観察のヒントになりそうです。
1.脚のこわばり
2.震え(振戦)
3.ボタンかけや着替えの困難さ
4.歩行時の腕の振りの少なさ
5.足が床にくっつく感覚(すくみ足)
6.日常動作の緩慢さ
この調査の結果、抗精神病薬(副作用で類似の症状が出ることがある)を服用している人を除外してもなお、31%の方がスクリーニングで陽性(リスクあり)となったそうです。これは、これは、単なる「薬のせい」や「加齢による自然な衰え」だけでは説明がつかない数値です。

3.QOLと「記憶」への影響

 さらに衝撃的だったのは、これらの運動症状が「生活の質(QOL)」や「認知機能」の低下と強く相関しているというデータです。講義では、『WHO-QOL-BREF(WHO生存品質調査票短縮版)』を用いた分析により、パーキンソン症状のリスクがある群は、そうでない群に比べて「主観的な生活の質」が有意に低いことが示されました。
 また、記憶機能に関する尺度『PRMQ(Prospective and Retrospective Memory Questionnaire)』の結果からは、「展望記憶(これから行う予定やアクションを覚えておく記憶)」の機能低下が見られることも報告されました。「体が動きにくい」ということは、単に移動が大変というだけでなく、「将来の予定を覚えて実行する」という自立生活に不可欠な能力や、本人自身の幸福感をも蝕んでいる可能性があるのです。

4.支援者が抱くべき「重要な問い」

 しかし、ここでウォレス准教授は、私たち支援者が常に頭に置いておくべき「ある問い」を投げかけました。

「私たちが目にしている症状は、神経変性(病気による進行)なのか? それとも幼少期からの特性が年齢とともに変化したものなのか?」

 データによれば、PSQの項目のうち「動作が遅くなる」という症状は中高年になってから発症・自覚するケースが多い一方、「歩行時の腕の振りのなさ」は幼少期から続いているケースが多いそうです。つまり、全ての症状を「老化や病気(神経変性)」と決めつけて過剰に心配するのも違うし、逆にすべてを「自閉症の特性だから仕方ない」と見過ごして医療的介入の機会を逃すのも危険だということです。
 この見極めは専門家でも難しい領域ですが、私たち現場の人間が「どの症状が、いつ頃から現れたのか(変化したのか)」を記録し、PSQのような視点を持って観察し続けることが、ご本人の健やかな老後を守るための命綱になるのかもしれません。

5.感想

 今回の講義を受けて、私自身、現場での「見る目」をアップデートしなければいけないと強く感じました。高齢の自閉症の方に関わるとき、もし動作がゆっくりだったり、体が強張っていたりしたら、それは単なる「加齢」でも「こだわり」でもなく、適切な医療介入が必要なサインかもしれません。UPDRSやPSQといった専門的な視点が存在することを知っているだけでも、私たちの気づきの感度は変わるはずです。
 まだ研究途上の分野ではありますが、だからこそ、私たち現場の人間が小さな変化に気づき、当事者の方の「健やかな老い」を守るための知識を蓄え続ける必要があるのだな、と深く反省とともに決意を新たにしました。
今回のシェアが、皆さんの現場やご家族との関わりの中で、少しでも「老い」について考えるきっかけになれば嬉しいです。
 最後まで一緒に学んでくださり、ありがとうございました。もしよろしければ、皆さんの周りで感じる「高齢化の変化」についてもコメントなどで教えていただけると幸いです。皆様の「スキ」や「フォロー」、SNSでの「シェア」が励みになります。よろしければ、関係者の方にもご紹介いただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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