#173「つけめん 大盛り」【博打打ちアマジの朝食】
……朝食は「朝、人を良くする」と書く。
見上げると絵画のような大きい雲が動かずに浮かんでいて、いかにも、だ。朝は出歩く人は少なかったが、仕事に向かう頃になると多少子供が走り回っていた。暑すぎる、外に出るのは危険だ。
駅のホームも人はほとんどいなかったのに、電車が到着すると、どこからか人が集まってきて、貪るようにドアに群がり、開いた瞬間凄い勢いで吸い込まれた。さすが驚いた。

多少ならんでも今日はつけめんが食べたかった。すっと爽やかに食べられて、エネルギーになるものと思った。太めの麺でもよかろうが、青葉のつけめんが食べたかった。少し待って席につき、周りに配られるつけめんを見て、みんな同じ魂胆なんだとわかった。
届いたら手を合わせて、麺を2/3くらい浸けるに留め、一発ですすっていく。うまい。つけ汁の熱いうちはこのすすり方を徹底して、小麦の香りとスープの脂を感じていきたい。青葉独特のスープは嫌味がない。そういうのもあって、他のお店を、今日は選ばなかったんだろうと納得できた。
たまに細いメンマをつまんでどんどんすすっていく。一発ですする必要があるのは、温度変化を遅くする意図と、ダラダラと時間をかけてスープを振り落とす事のないようにという願いとがある。
チャーシューの出番はまだだ。思ったより麺の減りが早く、ぬるくはなったなくらいなので、ここで麺を完全につけてから食べる事にする。
全身まで浸けて、完全に箸を離す。少ししたら探すように麺を集めて、もちろん一発ですする。つゆの濃い味が、干からびていた体に激突してくる。ゆず唐辛子の辛さもまた食欲をそそる。体から汗と一緒に抜け落ちた、大切なものをまた補ってくれるような味だ。そのままゆっくりとつけてすすっていくがそろそろクライマックス見えてきた。
チャーシューの出番だ。ホロホロになりやすいチャーシューを箱入り娘のように大事に守ってきた。その優しい歯触りと、獣のような香り、噛み締めると広がる旨みを感じては、麺をすすっていく。これだよ、これ。夏はこれがいいんだ。
おしまいの合図はナルトと決めている。最後にナルトを食べて、淡白ながら美味しいその味を、つゆでフォローする。
……朝食は「朝、人を良くする」と書く。
私は割スープをしない派だ。せっかく麺がくぐって薄くなっているのだ、そのまま飲んで然るべきだ。夏バテ防止にはそのまま飲むのがいいと信じている。
