さよなら、僕のタワーレコード。
先日、ミッドランドスクエアで映画「シン・エヴァンゲリオン」を観るため久しぶりに名古屋駅を訪れた帰り道、昨日で閉館してしまった近鉄パッセに立ち寄ってみた。
ここのエスカレーターをひたすら登った最上階に、タワーレコードがある。
20代の頃の僕が(おそらく)最も多くCDを買った音楽ショップだ。

高卒で就職して、鹿児島から愛知に出てきた1995年の春。
どういうきっかけでここを知ったのかもはや定かではないが、同期の数人で行ったことは覚えている。
鹿児島市内にある一番大きなCDショップよりも遥かに広いそのフロアに立って、僕は猛烈に感動した。
"A"から"Z"まで、国内盤のみならず輸入盤を含め膨大な枚数のCDを揃える洋楽コーナーに、邦楽コーナーと分けた一角に揃えられたインディーズ・コーナー。
個人的に当時はまだそれほど興味を持っていなかったジャズ・コーナーが広く構えられていたのは当然にしても、その頃くらいからのめり込みはじめたブルースのコーナーまであったことはとても嬉しかった。

それ以来、僕は給料がでた次の休日になると、必ずと言っていいほど名古屋駅へ行ってタワレコでCDを買い漁った。
当時の近鉄パッセの店舗は10~20代向けの女性向けアパレルが殆どで、コギャルの集団に混じりエスカレーターでひたすら最上階を目指したものだ。
数日前から「ほしいCDリスト」を用意し、それを参考に"A"から"Z"までくまなく調べて回る。
90年代後半のそのころはちょうど、各レコード会社が原盤を保有するロックの名盤CDが2000円前後で頻繁にリイシューされ出した時期だったので、リストアップしていない思わぬ収穫物もあったり。
そうやって一旦ピックアップしたCDの合計額は、用意していた予算を大幅に超える金額となってしまったので、そこから"ふるい"にかけるのにまた随分時間をかけたものだった。
そうして自分なりに"厳選"したあの頃のCDは、一枚一枚を本当に大切に聴いた。
正直、自分には合わなかったものも随分掴まされたけど、そういう"ハズレ"を引いた経験も含め、それらは今でも自分の血肉になっている。
転じて言えば、今はサブスク全盛の時代。
極めて低額の利用料だけで、これまで世の中に発表されたあらゆる音源がスマホ一つで聴けてしまう時代だ。
それは非常に便利な反面、音楽ひとつひとつの"重み"は徐々に無くなりつつある。
上に「自分には合わなかったもの」と記したが、それは時が経つにつれて理解することができたものもたくさんあった。
時間とお金をかけて買ったCDだから、やはり元を取りたいのが人情だ。
だが、現在のサブスク全盛の時代は音楽を聴くのにそんな労力もコストもかからないから、理解できなかった音楽はその人の耳から永遠に葬り去られる可能性が高い。
少々悲観的かも知れないが、そういったことがこれから先の音楽史にどのような影響を及ぼすのか、僕にも、誰にもわからない。

そんなことを考えつつ、この懐かしき店内を久しぶりに歩き回りながら、僕は2枚のCDを購入した。
ジュディ・シル「ハート・フード」と、ローラ・ニーロ「ニューヨーク・テンダベリー」
20代の僕の音楽知識を育んできたショップでの、最後の収穫物だ。
大切に聴いていきたい。
