●ミステリアス・スキン●
静かに広がっていく闇のように、あるいはいつのまにか満ちた水のように、すっぽりと飲み込まれてしまったのは失われた自分。
朝焼けの始まりのように、曇り空の夏の空気のように、淡く生ぬるいもので曖昧に埋められている。
劇場未公開だったグレッグ・アラキ監督の今作。20年余りの時を経てもなお、鮮烈に哀しく美しい。
1981年、アメリカ、カンザスの田舎町。8歳の夏に2人の少年に起きた「喪失」が描かれている。対照的な2人の喪失は同じであってそれぞれ違う。しかしどちらにも多大なトラウマであることは間違いない。 1人には甘く麻痺させる倒錯にすり替わり、もう1人には記憶をなくすほどの恐怖とショックとして。
やがて成長した彼らは共有したそれを初めてきちんと「喪失」と気づく。
淡いブルーの光、写真の中のように粒子の粗い視界、人工着色料と香料の甘いお菓子、スロウダイブやコクトー・ツインズが響き、心臓の隅はヒリヒリと痛む。
「題材が極めて深刻だからこそ、映像は極めて美しくみずみずしいものに仕上げ、小説(原作)の詩的な描写を映画に落とし込みたいと考えた」という監督の言葉どおり、哀しくセンセーショナルでエモーショナルな物語を、アラキ監督らしい美的感覚で独特の浮遊感のある映像世界に落とし込んでいる。
なんて美しい映画だろう、そしてなんて哀しいのだ。「哀」に満ち「哀」が埋めていく。
そしてキャストの繊細な演技。彼らの美しさは映画という永遠にいつまでも残る。やっぱり私はグレッグ・アラキが大好きだ。
