ヨーロッパで働いてみて、想定内だったこと・少し驚いたこと
これまでの記事では、海外大学院の話題を中心に書いてきました。
海外大学院を選ぶときに考えたこと、現地就職を見据えて準備したこと、ビザや就労許可でつまずいた経験など、自分が海外キャリアを作るまでの過程をできるだけリアルに書いてきました。
また、前回の有料記事では大学院留学をするかどうか迷っている方に向けて整理するといい内容をかなり具体的にまとめました。
ただ、前にも書いた通り、海外大学院はゴールではありませんでした。
海外大学院に進んだ大きな理由の一つは、その先にある「海外でソフトウェアエンジニアとして働くこと」でした。
現在はヨーロッパに住みながら、アメリカに本社を構えるテック企業で、ソフトウェアエンジニアとして働いています。
自分がヨーロッパで働くことに興味を持った理由はいくつかあります。
ソフトウェアエンジニアとして比較的高い報酬を目指せる可能性があること。ワークライフバランスを大事にしながら、専門職としてキャリアを作れる可能性があること。そして、ヨーロッパ内の他の国や周辺地域に行きやすく、仕事だけでなく生活の選択肢も広がりそうだと感じたことです。
海外大学院を目指していた当時、自分はさまざまなメディアでヨーロッパでの生活や働き方について情報収集をしていました。
ただ、見つかる情報の多くは、ワーキングホリデー、留学、パートナーへの帯同が中心でした。もちろんそれらも参考にはなりましたが、自分が本当に知りたかったのは、ヨーロッパで専門職として働くと、どんな日常になるのかでした。
今回は、海外大学院の先にあった「ヨーロッパで働くこと」について、自分が想定していたことと、実際に働いてみて少し驚いたことを書いてみます。
ただし、最初に断っておくと、これはヨーロッパ全体の話ではありません。
当然ですが、アジアの国々で文化が異なるように、ヨーロッパでも国によって制度も文化も違います。会社や職種によっても、働き方はかなり変わると思います。
さらに、ここで書くことには、ヨーロッパの文化だけではなく、ソフトウェアエンジニアやテック企業特有の文化も混ざっているかもしれません。
その前提で、あくまで自分の観測範囲で感じたことを書いていきます。
休暇は取りやすい
まずは大本命の休暇についてです。ヨーロッパで働く前から、休暇が取りやすいという話は聞いていました。
実際、日本でグローバルなコンサル企業に勤めている友人からも、夏やクリスマスシーズンになると、ヨーロッパ側のチームと連絡が取りにくくなったり、その分の作業を他の地域のチームが負担したりすることがある、という話を聞いたことがありました。
そのため、ヨーロッパでは休暇をしっかり取る人が多い、ということ自体はそこまで意外ではありませんでした。
ただ、実際に自分が海外企業で働き始めて感じたのは、休暇が単なる制度ではなく、かなり自然に仕事の前提に組み込まれているということです。
自分の会社でも、知人が働く会社でも、夏やクリスマス周辺に1〜2週間の休暇を複数回取るのは割と普通です。
最初の年、自分はあまり休暇を取らずに働いていました。まだ入社して間もないこともあり、休みすぎるのはよくないのではないか、という感覚があったからです。
すると、上司から呼ばれて、きちんと休暇を取るように注意されました。
これは自分にとって、かなり印象に残っています。
日本で正社員として働いた経験がないので、日本企業全体と比較するつもりはありません。ただ、自分の中には「休暇はできるだけ遠慮するもの」という感覚がどこかにありました。
でも、少なくとも自分が働いている環境では、休暇は遠慮しながら取るものというより、働き続けるためにちゃんと使うものとして扱われているように感じました。
地域によっては、一定の休暇を取らない従業員に対して、その分の扱いが会社側の負担になることもあるようです。制度の詳細は国や地域によって違うので断定はできませんが、少なくとも「休暇を取らないことが良いこと」とは見なされにくい環境なのだと感じました。
もちろん、休む前に自分の担当範囲を整理しておくことは必要ですし、企業の仕組みや文化の一部が従業員が休暇を取っても回るように設計されています。
休暇を取りやすい環境だからこそ、普段から仕事を属人化しすぎないことや、前提・背景・進捗を共有しておくことが求められます。
休むことも仕事の前提に入っている。
だからこそ、休めるように仕事を整理する責任もある。
この感覚は、働き始めてからかなり強く感じるようになりました。
給与や転職はかなり現実的に考える
もう一つ仕事面で印象的だったのが、給与や転職に対する考え方です。
ヨーロッパで働くというと、休暇やワークライフバランスの話が目立ちやすいです。実際、自分の観測範囲でも、休みや生活を大事にする人は多いと感じます。
ただ、それはキャリアや給与に無関心という意味ではありません。
むしろ、専門職として働いている人たちは、自分の市場価値や給与についてかなり現実的に考えている印象があります。
他の企業の面接を受け、その結果をもとに現在の会社と給与交渉をする人もいます。複数社を同時に受けて、オファー条件を比較しながら交渉する人もいます。
自分自身も、新卒で就職活動をしていたときに複数の企業からオファーをもらい、最終的に一方の条件が大きく改善された経験があります。
当時は、オファーをもらうだけでも大変だと思っていました。なので、複数の選択肢を持つことが条件交渉にここまで影響するのかと、かなり驚きました。
また、知人からは、会社側から「君は良い働きをしているので給与を上げたい。そのために他社からオファーを取ってきてほしい」と言われた、という話を聞いたこともあります。
もちろん、これは会社や地域、職種、個人の状況によって大きく違うと思います。
ただ、自分の周りを見ていると、給与や転職はかなり現実的なキャリア選択として扱われていると感じます。
また、会社に残る期間も、人によってかなり違います。自分の周りでは、1年から10年くらいの幅で働いている人をよく見ます。一方で、1年未満で辞める人や、10年以上ずっと同じ会社にいる人は、そこまで多くは見ない印象です。
これもあくまで自分の観測範囲の話ですが、少なくとも「一つの会社に長くいること」だけが正解ではなく、自分の状況に合わせてキャリアを動かしていく感覚があるように思います。
旅行のしやすさ
ヨーロッパで働くことに興味を持った理由の一つに、他の国へ行きやすそうだという期待がありました。
日本にいた頃、自分の周りにいた人にとって海外旅行は、航空券を取り、まとまった休みを確保し、ある程度しっかり計画して行くものでした。気軽に行けるものではない、という感覚があったと思います。
もちろん、ヨーロッパに住んだからといって、毎週のように旅行できるわけではありません。仕事もありますし、お金や時間にも限りがあります。
それでも、実際に住んでみると、国境を越えることへの心理的なハードルはかなり下がりました。
ヨーロッパでは、国同士が地理的に近く、鉄道やバスで国境を越えられる地域もあります。また、格安航空も発達しているため、数日の休みや週末を使って別の国に行くことも、そこまで特別なイベントではありません。
場所や時期にもよりますが、早めに航空券を取れば、かなり安く移動できることもあります。仕事終わりに空港へ向かい、週末を別の国で過ごして、また戻ってくる。そういう移動の仕方が現実的な選択肢として入ってきたのは、自分にとってかなり大きな変化でした。
実際にヨーロッパに住んでからは、旅行に行く機会がかなり増えました。
有名な都市だけでなく、少しマイナーな場所や、アクセスに時間はかかるけれど本当に綺麗な自然にも行きやすくなりました。鉄道やバスを乗り継いだり、格安航空で近くの空港まで行って、そこからさらに移動したりする必要がある場所もあります。それでも、数日の休みを使えば、日本にいた頃は名前も知らなかったような街や、山、湖、海沿いの町まで足を伸ばせることがあります。
また、旅行を通して、単に観光地を見るだけではなく、「自分はどういう場所に住みたいのか」「どんな気候や街のサイズが合うのか」「旅行先として好きな場所と、生活拠点として合う場所は違うのではないか」と考えるようにもなりました。
生活のしんどさもある
ヨーロッパで働くことには、魅力的な面がたくさんあります。
休暇は取りやすいですし、周辺国にも行きやすいです。街並みがきれいな場所も多く、週末や休暇を使っていろいろな国を旅行できるのは、ヨーロッパに住む大きな魅力の一つだと思います。
ただ、実際に住んでみると、良い面だけではありません。
自分が思ったより生活に影響するなと感じたのは、天気、治安、物価です。
まず、冬の暗さや天気の悪さは、思っていた以上に気持ちに影響しました。
ヨーロッパに住む前から、冬は日が短いということは知っていました。ただ、旅行で数日滞在するのと、そこで生活するのはかなり違います。
冬になると日照時間が減りますし、天気が悪い日も増えます。自分の場合、冬は気持ちが落ちることが増えました。
治安も無視できない問題です。国や都市、エリアによって程度の違いはありますが、基本的には日本にいる時より気をつけないといけません。特に大きな都市にいる際は、歩く場所や持ち物の持ち方に気を使うようになりました。
物価の上昇もかなり現実的な問題です。
海外就職というと、給料の高さに目が行きやすいです。実際、ソフトウェアエンジニアとして比較的高い報酬を目指せる可能性があることは、自分がヨーロッパで働きたいと思った理由の一つでした。
ただ、給料だけを見て判断すると、生活の実感とはずれることがあります。
最近は日本でも物価が上昇しているようですが、自分が住んでいる国でも物価や家賃の上昇を感じる場面も多いです。収入が増えても、生活費も同時に上がれば、思ったほど余裕が出ないこともあります。
だからこそ、海外就職や現地就職を考えるときは、給料の額面だけでなく、その国や都市で実際に暮らすコストも見る必要があると思います。
自分の人生を自分で組み立てていく感覚
ここまで、自分がヨーロッパに住む中で体感したことをいくつか紹介しました。
もちろん良い面ばかりではありません。冬の暗さ、治安、物価や家賃の上昇など、生活に直接影響する現実もあります。
それでも、自分にとってヨーロッパに移住して働くという選択は、想像していたよりも総じて良かったと感じています。
そして、これは一部の特別な人だけにしかできない選択ではなく、準備の仕方や進むルートを考えて努力をすれば、再現不可能なものではないとも思っています。
次回以降の記事では、海外大学院の選び方、奨学金の準備、現地就職までにやったこと、海外テック企業で実際に求められる働き方についてなど少しずつ共有していきたいと思っています。
少しでもヨーロッパ移住を考えている人の背中を押せるような記事や、実際に役立つ記事になれば嬉しいです。
