【ショート】 遅れて気づいた恋
―― short story ――
彼女がいなくなってから、
静かになりすぎた。
仕事は回っている。
困ることもない。
夜、書類を綴じたあと、
私はふと思う。
――あの人は、
笑顔のかわいらしい人だった。
周囲は散々なことを言っていたが、
それを目撃したことはない。
特段、気にも留めなかった。
「……でていきます」
珍しく表情を曇らせていた。
早く笑顔にさせてやりたくて、すぐに頷いた。
望んだのとは違う笑顔で、彼女は背を向けた。
数年後、
別の場所で、彼女の噂を聞いた。
私よりも、身分の低い男性と一緒になった、と。
手紙は、書かなかった。
今さらだった。
——あの人は、笑っていればいい。
こちらの企画に参加させていただきました🌿
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