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【ショート】 夜明けを忘れた竜

―― short story ――

静かだった。

それでよかった。


時だけが過ぎていく。
目を覚ますと、一人の少女が体を丸めて眠っていた。

穏やかな顔で寝息を立てている。
近づいて匂いを嗅ぐ。

長いこと眠りについていた、この身に耐え難い衝動が走る。

うまそうだ。
涎が出る。


久しぶりのご馳走だった。


また、時が過ぎた。
目を覚ますと、今度は鹿が丸くなって寝ていた。
匂いを嗅ぐ。
涎が溢れると一口で食べてしまった。

そして、また眠ろうとした。

足りなかった。

時々、目が覚める。
だが、何もしなかった。

ある日、眠る気が失せた。
久しぶりに立ち上がる。
咆哮を上げると、山が震撼した。

腹が減った。

翼を広げると、上空へ飛び旋回して辺りを確認する。
地形が変わっていた。

着地すると、地響きが起こり、山が少し崩れる。
見上げた久しぶりの空は、紫色が闇に吸い込まれるところだった。
やけに眩しい月と星が大地を照らした。

地上を見下げると、小さな生き物たちが逃げ惑っている。

そして、いた。

「竜だー!」

思い出す。

あの時の味を。

体が動いていた。

少女でなくても、うまいだろうか。

叫び走る男を追う。

すると、突如、翼に痛みが走る。

バランスを崩し、大地に足を着くと地響きが鳴る。

どこからか唸るような木々の音が広がり、尻尾で薙ぎ倒された木々が無惨な姿となる。

大型の剣を振り上げる一人の女が目に飛び込む。


あの少女と同じ顔だった。


翼が止まる。


大型の剣が体を切り裂く。

だが、浅い。

女の顔が絶望に染まる。

穏やかな顔で眠る少女と違った。


――本当にうまかった。


懐かしい匂いのする女を頬張る。


やはり、あの少女の方がうまい。


女の口は最後にこう動いていた。
「ごめん、ミア」
ミアというのか、あの少女は。


夜は長い。
寝床に戻ると、満腹のまま眠りについた。


次に目が覚めると、少女がいた。

今度は腰を抜かし、体を引き摺っていた。
匂いを嗅ぐ。
かなぎり声が耳を打つ。

うるさい。

食べる。

不味かった。

満たされない。

ミアが食べたい。


漆黒の翼を広げ、上空へ飛ぶ。


ただ、あの少女をもう一度。


遠くから忌々しい陽の光が昇る。



——竜は、目覚めた。









こちらの企画に参加しています🌿
素敵な企画をありがとうございます。

今回は、テーマが「自由」ということで、
COBIToの頭の片隅に住んでいたブラックドラゴンを解き放ちました。
今は「自由」に羽ばたいていると思います。

少し怖いお話になってしまいましたが、
よろしくお願いいたします🐉



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