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【ショート】 Run With The Wind -風が止まる場所-

―― short story ――

とうとう、やってきた。
ここに来るまで永い、永い時が過ぎてしまった。

――長かった。

気がつけば、あちらへ流れた。
光を追って、戻らなかった。
八十年もかかった。
でも、後悔はしていない。
初めて目にした光景は、どれも素晴らしいものだった。
思い出しただけでも、胸が熱くなる。
いつまでも、
いつまでも、留まりたいと思う場所もあった。
それでも、もっと素晴らしい景色があるかもしれない。
そう思うと、いてもたってもいられなかった。
だから、仲間とはぐれたと分かった時も、振り返らなかった。
その先にある景色の方が、いつも眩しかった。
ただ、新しい景色を流れるままに見た。

こんな自分でもようやく辿り着いた。

最後の場所に飛び込む。
あたたかな光に包まれる。

広がる――。

しばらく、幸福な気分に浸った。


気がつくと、声の限りに泣き叫んでいた。
あんなに幸福な気持ちだったのに、
激しい、狭く、苦しい道のりを通ってきた気がする。

目は開けることができなかった。

「まぁ、元気な女の子ですよ」

声が耳に届く。
包まれる手が大きくなる。

「がんばったな」

啜り泣く声が聞こえる。

肌が柔らかいところに触れると、口に含んで、力強く吸った。

吸うたびに、体の力が抜けていった。

「この子の属性が出ましたよ」

「先生!」

「……赤ん坊なのに、属性の分かる子がいるんですか?」

「たいへん珍しいことだと思います。反応が見られたので試してみたんです。」

「……それで、属性は?」

「風です」


医術師が目を細めた。

窓辺の白い布が、小さく揺れた。



(了)


イメージテーマソング『Run With The Wind -風が止まる場所-』


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