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【ショート】 半導体大仏

娘に携帯を買ってもらった。
心配だから持っていてと半ば強引に持たされた。
液晶画面の桜のアイコンを押すと娘に繋がる。
ため息をついて、少しの息苦しさと一緒に携帯をカバンにしまう。

向こうから娘が手を振っている。
隣には娘の旦那様と夫が待っていた。
ベンチにのせていたカバンを持ち、よいしょ、と立ち上がる。

今日はN山に登山に来ていた。

最近、足腰が思うようにならない私を見て、娘が提案した。
体を動かすことは苦ではない。

ただ、もう、ゆっくりにしか動けない。

急な坂になってくると、夫が手を握ってくれる。
茶色の幹の間から緑が覗く。
立ち止まって息を整えるたびに、山の空気が胸に入った。

頂上付近には、名物の大仏が聳えている。

ちょうど昼時かと携帯を出し、思わず足を止める。

電波がたっていた。

娘が教えてくれた桜のアイコンを押す。

『どうしたの?』

聞き慣れた声に口元が緩む。

「頂上についたよ」

見上げる。
大仏は何も言わない。
ただ、大きな掌を空へ向けていた。

(410文字)



田原にかさんの企画に参加しています!
今週のお題も一瞬フリーズしてしまいました😆
よろしくお願いいたします。


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