【ショート】 金曜日のアパート
―― short story ―—
風呂上がりの畳に、そのまま寝転がる。
天井の照明が少し眩しく、扇風機の風が腹の上を通る。
窓は開け放たれていて、
遠くの道路の音と、誰かの笑い声が混ざって入ってくる。
彼は何も考えず、指先を動かした。
今日は散々だった。
うっかりメールの送信先の相手を間違えて、
上司に大目玉を喰らったのだ。
幸い大事にはならずに済んだけど。
大きなため息をついて、心にのしかかった重みに潰されそうになる。
この感覚は、名前を付けると逃れられない気がした。
少し経って、肌が冷えてきた頃、
彼は静かに立ち上がり、
窓を閉めようと、立ち上がる。
窓辺から目に映った外の景色に、
——彼女がいる。
俺は、バタンと窓を閉めて後ずさる。
……。
一瞬、思考が停止するが、慌てて着替え始める。
玄関を飛び出すと、
アパートの階段を駆け降りた。
俺は彼女の細い肩をガシッと掴んだ。
「どうして、こんな遅くに出歩いてるんだ。」
彼女は目を丸くしていた。
危ないじゃないか。
出かかった言葉は飲み込む。
「……ごめんね。雪から聞いたの。ようちゃん、今日落ち込んでたって。
心配になって、来ちゃったの。」
俺は深くため息をついた。
そして、
気づけば、彼女を抱きしめていた。
……妹よ、余計なことを。
残念なことに、妹は職場の後輩だった。
わざわざ兄と同じでなくてもいいだろうに。
面白半分に彼女に伝えたんだろう。
「ごめん、心配かけて。……情けないけど、平気だよ。」
そういうと、体を離した。
「良かった。……お酒買ってきたの。一緒に飲もう。つまみもあるよ。」
微笑む彼女。
……なんで俺なんだろうな。
なんで、こんな子が俺と付き合ってるんだろう。
いまだに不明だが、離す気はない。
彼女を逃したら、もう二度と女性と付き合える気がしない。
「ありがとう。……俺、なんも用意してないけど。」
「私が突然来たんだもの。気にしないで。」
彼女から荷物を受け取り、
手を引いて部屋に戻る。
窓はしっかり閉めた筈だ。
玄関の扉を閉めると、俺は先に彼女に触れた。
……最高の金曜日じゃないか?
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