【ショート】 蕩けた時間
―― short story ――
夕日を眺めながら、
とぼとぼと帰路につく。
少し淋しげな静寂が辺りを包んでいた。
早足になりながら歩く。
マンションの前まで来ると、
バッグから鍵を取り出す。
エントランスに入ると、
エレベーターを横切って、三階まで階段を登った。
ため息をついて、
家の前を見ると、置き配が置いてある。
途端に心が弾む。
足は疲れを忘れたようだ。
いそいそと玄関の鍵を開け、
扉を開く。
軽い箱を片脇に抱え、明かりをつける。
ソファにバッグを置き、
箱をダイニングテーブルに置いた。
手洗いうがいを済ませ、ルームウェアに着替える。
もこもこのワンピースにカーディガンを羽織ると、
カッターを持ってきて箱を開けた。
「……ふふ」
思わず、口元がニヤける。
中にはセールになっていた、
通販のチョコレートサンドクッキー。
一つだけ開封し皿にのせる。
もったいぶって眺めてから、
一口。
咀嚼すると、贅沢な甘さに支配される。
噛み締めてから、もう一口。
……あまい。
もう半分がなくなってしまった。
でも、止まらない。
ペロリと平らげると、
言いようのない満足感で満たされた。
……しあわせ。
次はコーヒーが飲みたいと、お湯を沸かしに立ち上がった。
――ピンポーン
インターホンが聞こえ、
私は玄関に方向を変えた。
念の為、覗き穴で誰か確認する。
思った通りの人物が立っているのを確認すると、
肩から力が抜けた。
……今日は仕事が早く終わったのかな?
ずり落ちたカーディガンそのままに、
ガチャっと扉を開いた。
「おかえりなさい」
微笑んで出迎えると、
彼は少し目を丸くした。
いつもなら、笑顔で「ただいま」と言ってくれるのに、
なんだか表情が硬い。
少し強引に中に入ると、素早く扉を閉め、鍵をガチャっと閉めた。
彼はカバンをどさっと床に置く。
そして、
私の両肩を掴むと、
強く抱きしめられた。
頭を撫でられると同時に、口に温かいものが当たる。
少しすると、口内に舌が侵入し、
舌が絡まる。
ゆっくりと離れると、
「……あまっ」
そう聞こえてくる。
……そりゃ、チョコ食べてたから。
火照った顔のまま見上げると、
舌舐めずりをしながら目を細める彼。
肩に置かれていた手は、
はだけた場所から服の中に滑り落ちている。
「……こんな格好で玄関に出たらダメだよ。」
その問いに反論したことが、たくさんあったけど、
近づいてくる彼の体温がやたらと高いのを感じて、
とりあえず、目を閉じることにした——。
いいなと思ったら応援しよう!
この物語を楽しんでいただけたら、そっと応援していただけると嬉しいです。いただいたチップは、物語を続けていく力に使わせていただきます。