【ショート】 七夕の歩幅
「みんな、集合!」
呼び声が聞こえ、広場へ向かう。
目に映ったのは、五色に染まった夜空の下に浮かぶ雲。
……今年もか。
昔は梶の葉に書かれた願いだけが天に昇って来た。
今は違う。
雲には赤や青の染みが広がっている。
短冊の着色料だ。
願いは神に届く。
残るのは雲の色だけ。
幼い星々たちは一斉に雲の拭き掃除に取り掛かる。
俺も行くか。
モップを片手に降り立つ。
「お疲れ様です」
ふわりとした気配がすると、彼女が横でモップを持っていた。
「休日出勤、お疲れ様です」
彼女は笑うと、モップを走らせる。
走った歩幅の分だけ色が無色透明に変わる。
後に続いた。
作業が終わった頃には、夜が明けていた。
五色に染まっていた雲も今は白くなり、
願い事だけがキラキラと天へ昇っていく。
見ると、彼女が一つの願いを胸に抱いていた。
「それは?」
「これは私が叶えるの。」
『空をきれいにしてくれてありがとう』
彼女は少しだけ歩幅を広げた。
朝焼けが、その後ろをゆっくり追いかけていった。
(410文字)
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