【ショート】 四等分のショートケーキ
―― short story ―—
私には、好きな人が三人いる。
初めて理人に会ったのは、
3年前。
大学の専攻の授業中に、
お腹が痛くなって席を立った。
顔色が真っ青の私を見て、
医務室までついてきてくれた。
次の授業の時に、
「大丈夫だった?」
と声をかけてくれて、それはもう嬉しかった。
初めて秀馬に会ったのは、
1年前。
友達に誘われて行った合コンで、
横にいた男性だった。
秀馬はもう社会人で、
友人の元カレの友達なんだとか。
私と同じスイーツ好きで、
カフェの話で盛り上がった。
それから、時々会うようになった。
初めて直哉に会ったのは、
6年前。
高校時代の同級生だった。
でも、この頃は男性と話すのは、
慣れなくて、一言も話したことはなかった。
卒業式の帰り道に、
突然、声をかけられて心臓が止まりそうだったのを覚えている。
「大学、一緒だね」
……知らなかった。
別れ際に連絡先を交換して、
それから、よく会うようになった。
もうすぐ就職する。
心が落ち着かない日々だった。
そんな日々に、三人がいた。
それだけで、十分だった。
みんなにときめくけど、甲乙つけがたくて、
——選べない。
このまま、友達でいればいい。
そっと、目を閉じて、
気持ちを綴っている日記帳を閉じる。
そして、寝ようと電気を消そうとした時だった。
インターホンが鳴る。
……誰だろう?
こんな時間に。
私は一人暮らしだった。
お隣には友人もいるし、大丈夫。
しっかりチェーンは閉めている。
覗き穴に目を近づける。
三人が立っていた。
私はチェーンをつけたまま、扉を少し開けた。
「……どうしたの?」
上目遣いに見ると、
三人が同じようにため息をついた。
「お誕生日おめでとう」
直哉が私に紙袋を渡してくれる。
「……ありがとう。」
驚きながら、チェーンを開けて、
紙袋を受け取った。
「俺も」
理人がブルーのリボンの箱をくれる。
「あ、ありがとう」
「お誕生日おめでとう」
秀馬はくまのイラストのビニール袋を渡してくれる。
あと、ケーキも買ってくれたみたいだった。
「ありがとう……誕生日だって、忘れてた。」
「だと思ったよ。……で、たまたま出くわしたけどさ。」
理人が二人を見る。
「誰が本命なわけ?」
「……誰ともお付き合いとかしてないよ」
「彼氏いないって言ってたよね」
秀馬が笑う。
笑っているのに、冷たかった。
「この中で、部屋の中に入っていいのって誰?」
直哉が真面目な顔で言う。
「……みんな入っていいよ」
突然、三人の顔が残念な人を見るように歪む。
本心なのに。
なんで?
視界が滲む。
三人が動揺するのが、見えた。
「……とりあえず、食べたら。お邪魔していいんだよね。」
秀馬がケーキを前に出しながら、早口に言う。
「お邪魔しまーす」
理人が私の肩を抱いた。
「おい。」
直哉の声が低い。
「入っていいんでしょ」
理人が笑う。
少し、ほっとして「うん」と答えた。
……あと、寝るだけだったし。
ワンルームに四人は狭かったけど、
誰も、何も言わなかった。
ただ、直哉が私のパーカーを見つけると、
私の肩にかけ、着るように促された。
それから、私だけに買ってきてくれた小さなショートケーキを、
四等分して、みんなで食べた。
四等分のケーキは、少し歪だったけど。
甘かった。
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