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【ショート】 氷の花

―― short story ――

「僕と一緒になってください」

真剣な眼差しに溶けてしまいそうだった。

「ずっと、好きでした」

頬を赤く染めたまま、青藍は手を強く握り締める。

「……あなたの目に止まりたくて、ずっと、頑張ってきました」

ゆっくりと跪く。

「どうか、あなたの生涯を僕に下さい」

「……」

「……」

深い、ため息を零しながら、青蘭は地に尻をついた。
手元には、青い氷の花。

「……愛しています」

――もう、今日で100日目だった。

朝と夜、同じ場所に立つ。
同じ言葉を残して、帰っていく。
誰に向けているのか。

氷の泉の縁に、花がいくつも咲いている。
手にとっても、形は崩れない。
冷たいまま、ただ、そこに残る。
人々は、永遠の愛を告げる花だと噂している。
皆、手折っても失われない花を求めてやって来る。
けれど、
毎回、花を持ってきて、愛を囁いていく男は初めてだった。
だから、興味を持ってしまった。
願いは分かる。相手だけが、見えない。

何度も視線が、同じ場所に戻る。

そして、次の日の101日目。
青蘭は来なかった。

次の日、外界を見た。

そこには、処刑場へ連れて行かれる青蘭の姿があった。

――なぜ。

視界を広げる。

表情は、見えない。少し、離れたところから声が響く。

「涼怜、本当に大丈夫かい?」
涼怜と呼ばれた美しい女人は、震えていた。
そばには、見知らぬ男性が肩を抱いている。
「……青蘭が、」
声は震えている。
「青蘭がやったのよ」
涙が零れる。
でも、その目は――

――指先に、ひびが入るような感覚がした。

青蘭はなぜ――。

死刑状に、怒号が響いた。
そして、刃が落ちる。

涼怜の口元が弧を描いた――。

首と胴の離れた青蘭の姿を見つめる。

胸元にしまっていた氷の花が、私の手元に戻る。

――彼の魂とともに。

そっと、青蘭の目が開く。

「……女神?」

そのようなものではないけれど、そっと青蘭の顔に触れる。
彼の顔に赤みがさす。
ずっと、こうしたかった。

「……ここに、残る?」

静かに、頷いた。


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