【エッセイ】 海老を撒き散らかしたみたいに
―― short story ―—
「ママ、トビウオになったよ」
その声は、はつらつとしていた。
……トビウオ。
整えた布団に腰掛けて、スマホを取り出す。
『とびうお
ダツ目トビウオ科の海魚。多くは全長20~35センチメートル。体は円筒形で細長い。胸びれが発達して翼状になり、これを用いて海面上を滑空し、時には時速60キロメートルで300メートル以上も飛ぶ。……(省略)』
出典:スーパー大辞林。
そんなに早く飛んでるんだ。
気になったことを調べていると、
「……おはよう!」
後ろから元気な声が響く。
「おはよう。トビウオちゃん」
スマホをしまって、布団から飛び出した娘の毛布を整える。
「どんな夢だったの?」
聞いても、もう返事はなかった。
興味は別の方へ行ってしまったらしい。
朝食を食べた後に、もう一度、問うてみる。
「で、トビウオになって何したの?」
「……ビタミンCみたいになってた」
……形のことよね。
「海老を撒き散らかしたみたいに!」
……語彙力。
……いや、国語力。
寝る前に、一緒に何か読もうか。
私の懸念をよそに、
けらけら笑っている姿を見て、
とりあえず、私も笑った。
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