【ショート】 午後のコーヒーが終わるころ
―― short story ―—
キーボードの音が、
少しだけ早まった。
カップを持ち上げ、
底を確かめる。
白い円。
反射した午後。
「……飲み終わっちゃった」
声は、
自分に向けた小さな報告。
誰も返事をしない。
ため息が、
椅子の背にもたれ、
戻ってくる。
窓の光が、
机の端を越える。
続きを打つ。
誤字を消す。
カップを置く。
置く場所だけは、
丁寧だ。
立ち上がらない。
今は、
ここにいる時間。
香りのない一口を、
想像で飲んで、
彼女は、
次の行へ進む。
画面の中では、
誰かが、まだコーヒーを飲んでいた。
仕事は続く。
香りだけが、先に終わった。
ピンポーン。
……宅配便。
仕事の手は止まるけど、
貴重な運動の時間だ。
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