見出し画像

【ショート】 幼馴染はじめました


「かじゅちゃん、あげゆ。あーん、ちて」

「……うん」

メロンシロップのかかったかき氷を、
赤いプラスチックのスプーンで掬い、僕の口の前まで運ぶ。

口を開けると、甘さと冷たさが舌の上に広がった。

とあちゃんは、また緑色のところだけを少し掬い、
今度は自分の口に運んだ。

「はんぶんこ。……おいちぃね」

りんごみたいに頬を赤くして笑う。

「うん」

僕が笑い返すと、とあちゃんの柔らかな髪が頬の横でふわりと跳ねた。

「もうひとくち、どうじょ」

少し崩れたところを掬ったスプーンから、

かき氷がぽとりと床へ落ちる。

……あ。

とあちゃんの目に、みるみる涙がたまっていく。

口元をきゅっと結び、声を飲み込んでいた。

僕はとあちゃんの手ごとスプーンを握り、
残ったかき氷を掬って口に入れた。

「おいしいよ」


「和也、帰るわよ。叶愛ちゃん、またね」
母さんが部屋を覗く。


とあちゃんの涙は引っ込んだけど、


顔は赤かった。



今も彼女は、かき氷を頼むたびに、僕の分までスプーンをもらう。



(410文字)




田原にかさんの企画に参加しています🌿
よろしくお願いいたします🙇‍♀️


いいなと思ったら応援しよう!

COBITo|物語を書く人 【高校野球怪談120%🌿】 この物語を楽しんでいただけたら、そっと応援していただけると嬉しいです。いただいたチップは、物語を続けていく力に使わせていただきます。