【ショート】 一度だけ願いを叶える鳥
―― short story ――
コツン
小さな音をさせる。
クチバシでもう一度つつく。
あまりにも頑丈な窓に見えた。
中に届かないだろうか。
今度は上の方にあった小窓をつついてみた。
コツン
男が顔を上げる。
その顔は汚れ、表情まではよく見えない。
少しして男が立ち上がった。
じゃらっと鈍い音をさせ、鎖を引いて歩いてくる。
石造りの壁に手を添えて、小窓を開ける。
その手には、小指と薬指がなかった。
そっと男の手の甲に乗る。
小さな羽を広げると、男の肩に乗った。
男は一瞥し、また、元の場所に座り込む。
静かだった。
男はただ目の前の石の壁を見つめていた。
頭を擦り付けても、軽くつついても、
男は動かなかった。
鳥はそっと鳴いた。
正確には泣いた。
気づかれないように。
その時、暗闇の外が騒がしくなった。
「……どいてよ!ヨシュア!」
男の瞳に色が宿る。
鎖を鳴らし、立ち上がった。
近づくと闇の中にうっすらと扉が見えた。
鉄の扉を叩く音。
「ヨシュア!」
「……リゼ?」
「早く、開けてよ!」
外からガチャガチャと金属音が響き渡る。
バンっと勢いよく扉が開くと、見慣れた女性がヨシュアに抱きついた。
胸が凍りついた。
「……釈放だ。真犯人が見つかった。」
「……え?」
ヨシュアの瞳が大きく揺れる。
無理もない。
だって、犯人はヨシュアなんだから。
鳥はそっと小窓から外に出た。
暗闇から飛び出した空は眩しすぎて、少し体が傾いた。
ヨシュアを助けたかった。
私がわがままを言ったばかりに危険を冒させてしまった。
そんなつもりはなかった。
ただ、ずっと一緒にいたかった。
近くの木にとまり目を伏せる。
『リゼ、見てごらん。あの焦茶色の少し大きな鳥。』
『ん?どこ?』
『あれだよ。あっちの木』
『……ほんとだ。雀より大きいね』
『うん。この地方には鳥を祀る風習があるんだ。なんでも一度だけ願いを叶えてくれるんだって』
『へぇ』
……本当に叶えてくれた。
ヨシュアを自由に。
枝の上で、小さな羽を畳む。
もう二度と、彼の名を呼べない。
ヨシュアは幸せになれるだろうか。
あのリゼと一緒に。
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