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【ショート】 夢中でいられる間だけ

時計の針はBGM。
静寂の中でちくたく忙しそうだ。
書いている時は、
誰にも邪魔されない時間にしている。
入り口のドアには、作業中のクマの絵が描かれたフダ。
この時には、誰も入ってこない暗黙のルールがある。
ペンをノートに走らせ、
思考に耽る。
正しくは物語に入り込む。

自分の胸が高鳴る場所はどこなのか、
――探しながら。

朝、起きたら軽くストレッチ。
やらないと、コンディションが悪くなるから。

白湯を飲んで、ゆっくりと手帳時間を過ごす。

日程確認を終えると、
SNSとネットニュースを開いて、軽く情報収集。

朝風呂を済ませて、子供を起こしに行く。

朝食を作り、出勤の準備に、子供の見送りへ。

食器と家の掃除を軽く済ませ、
家を出る。

通勤中にふと思考に耽る。

電車に乗ると、イヤホンで音楽を聴きながら、
たまに浮かぶネタを携帯にメモする。

昼休みに、手帳を開く。
そして、閉じる。

帰宅しながら、買い出しを済ませ、
夕食を作る。

食後、子供と遊び、お風呂を済ませ、
寝かしつけをする。

ようやく自分の時間ができたところで、
読みかけの本に手を伸ばす。

読書に耽り、

今日も何も書けなかった……

ただ、そう思う。
余裕がないと、書きたくても書く時間がない。

「書くことはいつでもできる。何歳からでも作家は目指せる。」

親にも家族にも友人にも、私はずっとそう言い続けていた。

この生活を一体、何十年続けてきただろうか。

思い切って、
引っ越しを機に、会社を辞めた。

その後も、しっかりと時間が取れないからと、
読むだけだった。

だから、仕事がなくなり、
お金が減っていく現実の中。

子供の頃に先生に告げていた言葉。
「いつか小説家になりたい。」

いつかって、来るのだろうか?

それを思った瞬間に、

――書かなきゃ。

そう思った。

小学生から大学生までは、他人の評価を気にせず、
ただ、ただ、書いていた。

大学時代に、初めて外に出した作品の評価が、
自分の中で満足いくものではなくて、
社会人になるのと、別の好きなことをきっかけに辞めてしまった。

そして、忘れてしまったのだ。

子供の頃の思いと感覚を。

いざ、書き始めてみると、驚くほど筆が進んだ。
自分の中にこんな感覚が残っているなんて思ってもみなかった。

そして、ふと気づく。

今まで読んでいた時間で、これほどまで書けることに。

他人の評価は気になる。
これからも気にするだろう。

でも、書けるなら書いてみようと思う。

夢中でいられる間だけ。

そうやって、私は今日も
扉の向こうにある生活から、目をそらしている。

そして、今日も私は筆をとる。

時計の針はBGM。
静寂の中でちくたく忙しそうだ。
書いている時は、
誰にも邪魔されない時間にしている。
入り口のドアには、作業中のクマの絵が描かれたフダ。
この時には、誰も入ってこない暗黙のルールがある。
ペンをノートに走らせ、
思考に耽る。
正しくは物語に入り込む。

自分の胸が高鳴る場所はどこなのか、

――探しながら。



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