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【ショート】 雨のさんぽみち

―― short story ――

外から、しとしとと降る雨の音。

小気味良いBGMを聞きながら、
カフェインレスコーヒーを口にする。

こんな雨の日はどこにも行きたくない。
どんよりとした空を窓から眺めながら、
ただ、時間を過ごす。

どれくらいの時間が経ったのだろうか。
気がつけば、彼が椅子を引いて隣に座っている。
右手にはコーヒー。
中身は空っぽだった。

視線を彼に向ける。
「少し歩こう」
散歩に誘われるが、気が乗らない。
私の表情を見ても、彼は意志を曲げる素振りはなかった。

ため息をつき、立ち上がる。
「行こう」
半分残ったコーヒーはそのままで。

外に出ると、湿った空気が肌を包む。
そして、
目が覚めるような冷たい風が吹き抜けた。
コートのボタンをしっかり閉めてから、
傘をさす。
静かに傘を彼が取り上げると、
温かい手が私の肩を抱いた。

――距離が近い。

見上げると、確信犯が笑った。

「濡れちゃうよ」

ゆっくりと二人で歩き出す。

近くの公園は、季節ごとに楽しめる花壇があった。
道の途中で止まったり、進んだり。
雨に濡れた緑と花を楽しみながら歩く。
次第に小雨になってきた。

空からは光が差して、
もうすぐ晴れになるのを予感させる。
「お天気雨」
呟きと共に心が少し軽くなる。
ここで虹が見えれば、最高の散歩なのに。

数年後の雨の日、
また、散歩に出た。
小雨になって空を見上げる。
空からは光が差して、七色の光が帯状に広がった。

「あ……にじ」

微笑みながら涙があふれる。

――もうあなたはいないから。

あの時、大好きになった雨の日のお散歩は、
今も好きなままだ。

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