「飲み込みのリハビリ」って何をするの? 言語聴覚士が教える嚥下訓練の実際
こんにちは、言語聴覚士 の ryu です。
「最近、食事中によくむせるようになった」
「飲み込んだあと、のどに食べ物が残る感じがする」
「お父さんの食事に時間がかかるようになってきた……」
こんな経験、ありませんか?
実はこれ、嚥下(えんげ)障害のサインかもしれません。
「飲み込み」に問題があると聞くと、なんとなく「年のせいだから仕方ない」と思ってしまいがちです。でも、適切なリハビリで改善できることが多いんです。
今日は言語聴覚士の視点から、「飲み込みのリハビリ(嚥下訓練)」についてわかりやすく解説します。
そもそも「嚥下障害」ってどんな状態?
嚥下とは、食べ物や飲み物を口から胃へと送り込む一連の動きのこと。
健康なときは無意識にできているこの動作ですが、病気や加齢によってうまくいかなくなることがあります。
こんな症状、当てはまりませんか?
・ 食事中・食後によくむせる
・ 食べ物や飲み物が鼻に逆流する
・ ごはんを食べるのに時間がかかるようになった
・ 食後に声がガラガラになる
・ 食事量が減って体重が落ちてきた
これらは嚥下障害のよくあるサインです。
怖いのは「誤嚥性肺炎」
嚥下障害で特に注意したいのが、**誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)**です。
誤嚥とは、食べ物や唾液が食道ではなく気管(肺への通り道)に入ってしまうこと。本来は気管に異物が入ると咳で吐き出す反射が働きますが、この反射が弱まると気管に入ったまま肺炎を起こしてしまいます。
高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎と言われており、場合によっては命に関わる深刻な状態です。
だからこそ、早めに気づいて対処することが大切なんです。
言語聴覚士は「飲み込み」の何を見ているの?
STが嚥下の評価をするとき、見ているポイントはおもに3つです。
① 口の動き・力
舌や唇がしっかり動いているか、食べ物をまとめる力があるかを確認します。舌の力が弱いと、食べ物をうまくのどの奥に送れません。
② 飲み込みのタイミング
「ごっくん」のタイミングが遅れると、食べ物が気管に入るリスクが高まります。このタイミングのズレを見極めるのもSTの仕事です。
③ 食形態の判断
「この方にはどんな食べ物の形が安全か」を判断します。
サラサラした液体が飲み込みにくい人、逆にまとまりのないパラパラしたものが危険な人……状態に合わせて、食形態(とろみをつける・きざむ・ゼリー状にするなど)を提案します。
ここで管理栄養士さんとの連携がとても重要になります。安全に食べられる形態で、なおかつ栄養が取れる食事を一緒に考えていきます。
実際に行う訓練:3つのアプローチ
嚥下訓練には大きく分けて、**「間接訓練」「直接訓練」「セルフケア」**の3種類があります。
① 間接訓練(食べ物を使わない訓練)
飲み込み機能そのものを鍛えるトレーニングです。
例:舌の訓練
舌を前に出したり、左右に動かしたり、上あごに押し付けたりします。地味に見えますが、食べ物を口の中でまとめる力を鍛える大切な運動です。
例:嚥下おでこ体操
おでこに手を当てて、手に力を入れながら「ごっくん」と飲み込む訓練です。のどの筋肉を強化して、しっかり飲み込めるようにします。
② 直接訓練(実際の食べ物・飲み物を使う訓練)
実際に食べながら行う訓練です。食形態を調整しながら、安全に飲み込む練習をします。
「とろみ剤」で飲み物にとろみをつけたり、やわらかいゼリーから始めたり、少量ずつ進めながら安全を確認していきます。
実際の食事を使うからこそ、怖さもありますが、「食べる」という本来の目的に直結する訓練でもあります。
③ 自宅でもできるセルフケア
病院だけでなく、日常生活の中でできるケアも大切です。
パタカラ体操
「パ・タ・カ・ラ」を繰り返し発音するだけの簡単な口の体操です。
・ パ:唇を閉じる力(食べ物が口からこぼれない)
・ タ:舌を上あごにつける力(食べ物を送り出す)
・ カ:のどを閉じる力(気管に入るのを防ぐ)
・ ラ:舌を丸める力(まとめて飲み込む)
食前に5〜10回ずつ声に出して行うだけでOK。家族と一緒にやると習慣化しやすいですよ。
食事の姿勢を整える
実は、姿勢も飲み込みに大きく関係しています。
・ 背筋を伸ばして座る
・ あごを少し引く(上を向いて食べると気管に入りやすくなります)
・ 足の裏を床につける
これだけでも、誤嚥のリスクを下げることができます。
まとめ:「むせ」は体のサイン。放置しないで
食事中のむせや飲み込みにくさは、「老化だから」と見過ごされがちです。でも、適切な評価と訓練で、多くの方が改善しています。
こんな状態が続くようであれば、ぜひSTに相談してみてください。
・ 週に何度もむせる
・ 食事量が減ってきた
・ 食後に痰が増えた・声が変わる
・ 体重が急に落ちてきた
かかりつけ医やリハビリ科に相談すれば、言語聴覚士につないでもらえます。「食べること」は生きることの基本。あきらめないでほしいと思っています。
次回は、実際の嚥下評価でSTが使う「水飲みテスト」について詳しく解説する予定です。
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