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何満開の花よ咲け -ラフ×ラフの決意の賛歌(アンセム)-

新曲「何満開」ミュージックビデオ公開

ラフ×ラフ(以下本文中は「ラフラフ」表記で統一)1stアルバム「わたしファンファーレ」が12/17にリリースされる。
その収録曲で、新曲である「何満開」のMVが12/11にYouTubeで公開された。

推しのアイドルなのでもちろん贔屓目はあるが、とても良い曲・良いMVになっている。ここまでに至る物語を共に歩んできたアイドルとファンだからこそ感じる感動や共感、歓喜だけでなく、多くの人の共感を得られる楽曲にもなっている。MVはファンなら感涙ものの演出もあり(特にラスト)、SHOWROOMで行われたMV鑑賞会ではメンバーも涙を流していた。

しかし今回はそれらの気持ちを一旦抑えて、少し冷静にこの曲とラフラフの現在地を考えてみたい。


このタイミングで「何満開」を出した意味

「何満開」は田村歩美(たむらぱん)作詞作曲の、これまでのラフラフにはなかったエモーショナルな楽曲になっている。

たむらぱんの楽曲は、楽しげな曲調や独特な転調を含むメロディラインに、シニカルな言葉や哲学的なメッセージを込めた歌詞をのせるのが特徴。
「何満開」も、ストレートに前向きなだけではない、もがきながらでも前に進む自分を肯定するような歌詞が特徴的だ。

やや難解で哲学的な歌詞や、感傷を内包したメロディは、はっきり言ってしまえば「今」のアイドル楽曲の主流からは遠い位置にいるように見える。今の主流は、

  • キラーフレーズを入れ込んだリズミカルな歌詞

  • 真似したくなる特徴的でキャッチーな振り付け

  • アップテンポでアイドル楽曲らしい華やかなメロディ

を、ショート動画に対応した長さに詰め込む「バズ特化型」だ。

それ以外にも、プロデューサーやアレンジャーの音楽性の高さで曲そのものを聞かせるアーティステックなアプローチを取る「楽曲派」と呼ばれるアイドルもいるが、「何満開」はそのどちらとも毛色が違う。
心の奥で鳴り響く衝動や背景の物語を想起させる、文字通り「エモい」曲になっている。

また、今回のアルバムには「何満開」以外にも、メンバーの佐々木楓菜がラフラフを想って作詞作曲した「一期八会」や、中西圭三に楽曲提供を受けた「On Your Mark」など、トレンドやこれまでのラフラフの楽曲の方向性とは違う新曲が収録されている。
「一期八会」はYouTube企画を経てライブツアーファイナル東京公演で初披露され、「On Your Mark」はYouTubeでサビの一部だけが公開されている(2025/12/12時点)。

このタイミングのラフラフだからこそ、こうした曲になったことも、物語を共に歩んできたファンなら感じ取ることができるかもしれない。
ライブ動員も伸び始め、フェスのタイムテーブルの重要な場所を任せられるようになってきた今だからこそ、目先の数字を追い時代に迎合して消費されていく道を選ぶのではなく、「骨太な正統派」の姿を示すべき時なのだと。


色んな意味で異色なラフ×ラフのポジション

ラフラフは「地上」でも「地下」でもない不思議なポジションのアイドルグループだと私は感じている。

YouTubeの合宿企画「ラフラフハウス」の中で、メンバーの口からも

  • 佐久間さんプロデュースで恵まれてる子たちだと思われている

  • 業界の大人たちには認知されているけど、アイドルファンには響かない

  • イロモノ的に見られることが多い

といった発言が出ていた。

ラフラフの特徴の1つは、プロデューサーがテレビプロデューサー・佐久間宣行であることだろう。「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「トークサバイバー」「佐久間宣行のNOBROCK TV」など人気バラエティ番組を作りながら、自身もニッポン放送のラジオ「オールナイトニッポンZERO」のパーソナリティを長年務めており、業界内外の知名度も高く、一般のファンも多い。

そんな大物プロデューサー(ただしアイドルプロデュースは未経験)が、グループ発足のきっかけからオーディション、グループ結成までをYouTubeでドキュメントとして全て見せて誕生したのがラフラフである。

発足に至るドキュメンタリーがYouTube発信だったこともあり、彼女たちの主戦場はYouTubeからはじまっている。結成時点から佐久間Pのコンテンツのファンが一定数付いてきたため、お笑いファン層を多数抱えており、これもかなり異色といっていい。メディア露出の機会がないライブ中心の地下アイドルと比べれば、この点は確かに恵まれていたかもしれない。

ただし、事務所はラフラフが初の所属タレントになるALLWAYSという無名の新興事務所(その後フジコーズも在籍していた)、メジャーレーベルが付くわけでもなく楽曲はデジタルリリースのみの、いわゆる「地下アイドル」の運営体制。
しかもプロデューサーもスタッフもアイドル運営の経験はほぼ無く、活動序盤から精力的に楽曲はリリースするものの、ライブなどのアイドル現場に立つ回数は一般的な地下アイドルと比べて少なく、一方でレーベルや大手事務所所属のメジャーアイドルのようなマス媒体でのプロモーションも多くない状態だった。

楽曲も、

  • 考える時間をください:曲中にメンバーが即興で大喜利をする、ラフラフの代表曲

  • 君がNo.1:曲中にクイズが行われる

  • ドラマみたいに言わなきゃ:曲中に指示されたセリフを即興で演じる

  • 恋って線香花火みたい~ニセ取材に本気で答えた恋の歌~:ニセ取材のアンケートへのメンバーの回答を歌詞にした曲

など、バラエティ色が強い曲が多い

もちろん王道アイドル曲もかっこいい曲もあるのだが、他のアイドルと比較するとこの方向性の曲の印象はかなり強い。
またMVにもラランド西田や兼光タカシ、友田オレなど、芸人が出演することが多く、友田については作詞もしている。豪華ではあるがお笑い色がかなり濃い。そもそもデビュー時から公式お兄ちゃん・東京ホテイソンがいる(オーディション時からなので、ある意味デビュー前から)。

曲中だけでなくYouTubeやショート動画でも頻繁に大喜利をやっており、主宰イベント「アイドル天下一大喜利武闘会」も開催。メンバー曰く「人生かけるくらい」大喜利に取り組んでいる。
また、YouTube初期には元アイドルの先輩たちや放送業界関係者(番組制作側の人たち)をゲストに呼んで話を聞く機会が多かった。バラエティコンテンツとしてはおもしろく、メンバーの学びにもなっていたのだが、肝心のメンバーにスポットライトが当たる機会がやや少なかったと感じている。

Rough×Laugh(粗削り(Rough)な彼女たちが成長しながら、いろいろな人を笑顔(Laugh)にしていく)の名前が示す通り、笑顔や楽しさ、面白さを提供することがラフラフのグループコンセプトである。
数多のアイドルグループが乱立するアイドル戦国時代において、明確な特色があることは武器になると言えるが、この辺が「イロモノ」と言われる所以だろう。

良く言えばこれまで見たことのないフォーマット、悪く言えばアイドルとバラエティ、地上(メジャー)と地下の間、強いて言えばWeb中心に活動するYouTuberに近いとも言えるポジションに見えてしまうためか、ライブ動員にはかなり苦戦し続けた。
1周年のアニバーサリーライブは客席が埋まらず、2年目もメンバー全員が口を揃えて「停滞していた」「空回っていた」というくらい苦しんできた。主催ライブを単独から対バンに切り替えるなど運営側も試行錯誤するものの、業界の認知度と現場の温度差に苦しみ続けた。


転機と成長、そして決意

これもYouTubeで佐久間Pやメンバーが発言していることだが、転機は2年目の中盤の「それぞれのキャラを決めよう」という企画からだった。

後に佐久間Pが「おじさんがプロデュースしているグループというのが前面に出るより、一人ひとりが面白いと思ってもらったほうがファンは増える」と語っていたが、この企画がきっかけでふーちゃん(佐々木楓菜)が自身の作詞作曲の曲を作り、みくちゃん(藤崎未来)が自分でデザインした衣装を生地選びから縫製まで行い、どちらも2周年のアニバーサリーライブで披露。
メンバー自身が声をあげて実現させた、これまでのラフラフになかったアイドルど真ん中の企画は、画面越しに見ているだけだったファンを現場に呼び寄せ始めた。

他のメンバーもそれぞれ個性を発揮しはじめる。夏にはめーな(日比野芽奈)がTIF2025PR大使の座を掴む。ラフラフ自体も1日目SMILE GARDENでTIF全体のトッパーを務めたのにはじまり、2日目はDOLL FACTORYで初のトリ、3日目は主催イベント「アイドル天下一大喜利武闘会」のTIF出張版を開催するなどTIF2025を縦横無尽に駆け回り、他のアイドルファンの目に留まる機会も増え、いよいよ動員につながりはじめた。

そして秋に初の全国ライブハウスツアーの開催、冬に初のCD、それもアルバムの発売が発表された。

ここからさらに勢いを増していく期待感が高まる中、メンバーのもなみん(吉村萌南)が大学院の学業に専念するために一時活動休止を発表。衝撃も大きかった一方で、ファンも含め全員がもなみんの決断を前向きに受け止めた。

7人体制で行われた全国ライブハウスツアー。その初日の福岡でライブ初披露されたのが「何満開」だった(音源は佐久間PのオールナイトニッポンZEROで公開されていた)。

制作の進行やツアーでのお披露目などスケジュールの都合があるとはいえ、アルバム収録曲から「何満開」が真っ先にお披露目され、MVも先行配信されたことは、3年目にようやく成長曲線を描き始めたラフラフというプロジェクトをここからスケール(拡大)させていく、つまり「ここから売れる」という決意表明と取ることもできる。


さらなる成長のための支柱

楽曲から見るアイドルグループの傾向は大きく2つのパターンに別れる。

1つは楽曲のテイストは統一されておらず、王道系もロックテイストもシティポップもバラードも何でもやるグループ。代表格がAKB48だろう。「会いたかった」と「ヘビーローテーション」と「365日の紙飛行機」と「根も葉もRumor」に音楽的一貫性は無いが、「何でもありのAKB」はそれらを全て「AKBの曲」に落としこんでしまう。

もう1つはグループコンセプトを「音」に忠実に落とし込み、統一された世界観を構築するアーティスティックな音楽性を持つグループ。所謂「楽曲派」といわれるグループの多くはこちらに属している。48グループでもSTU48のシングル表題曲は、昭和の歌謡曲やフォークソングを思わせる、懐メロ調のテイストを基調としているものが多い。

両派はくっきり分かれているというより、バラバラ派と統一派の間にいくつもの段階がある。ラフラフはどちららかというと前者に近く、様々なテイスト・音色の曲を持っている。

ラフラフの楽曲で最も作詞を手掛けているのは現時点ではYouTubeスタッフで放送作家のなかじまはじめ(ワタシイロ光る、laughing!、9 revenge、パッパッ、かわいいスイッチ、AKO〜明るく可愛く面白く〜)、作曲数が一番多いのは「ぶん投げの遠藤」でファンにもお馴染みの遠藤ナオキ(君がNo.1、恋って線香花火みたい~ニセ取材に本気で答えた恋の歌~、考える時間をください、パッパッ、ドラマみたいに言わなきゃ)だが、他にも様々な人が曲作りに携わっているし、遠藤さんの曲もバリエーションに富んでいる。

どちらかというと遠藤さんはぶん投げられてる側なのだが

様々なジャンルの曲がある中で、今回の「何満開」や同じくアルバム収録の「一期八会」のような、感情を高ぶらせてエモーショナルに歌い上げるタイプの楽曲はこれまであまりなかった。

一つの理由としてメンバーの歌唱・パフォーマンスのスキル向上が挙げられる。

ライブはかぶせ無しの生歌が基本だが、オーディション時点で歌唱力が水準以上だったのははるるん(永松波留)とふーちゃん、ダンススキルはふーちゃん以外だとアイドル経験者のありさ(齋藤有紗)、めーな、ラストアイドルに合格後辞退したもなみん辺りまでが及第点といったところではなかっただろうか(※あくまで個人の私見です。生意気言ってすみません。石を投げないでください。)。歌唱力に定評があるはるるんでさえ、ファルセット(裏声)は得意だったが地声の「アイドル歌い」の歌唱には当初苦戦していた。

しかし3年間の経験の積み重ねでメンバーのスキルはかなり向上しており、歌割のソロパートの比率も上がった。
個人的に一番変わったと思うのはめーなだ。最初の頃は線が細い自信のない声の印象だったが、「何満開」では無音からの難しいラスサビの入りをソロで歌い上げるまでになった。メンバーの実力が上がってきたからこそ、難易度の高い曲が割り当てられるようになったというのもあるだろう。

しかし理由はスキルだけではない。以前の記事(アイドル20年史⑲ 2023年 アイドルの未来像考察)で、これからのアイドルに求められる3つの要素を挙げた。

  1. 継続的に見せる“キャラ性”

  2. 物語として描ける成長曲線

  3. コアファンが語り継ぐ「参加物語」

1のキャラ性について、ラフラフも3年目になり、個々のキャラがどんどん立ってきた。
※ここだけラフり隊向けのネタです。

3の参加の物語は、TIF×FNSチャレンジやライブチケット販促配信、個々のメンバーの投票型オーディションの支援など、ファンと共に走ってきた。

そして最後のピースだった2の成長曲線を、もがき苦しみながらメンバー自らの手でようやく掴もうとしている。

だからこのタイミングで「何満開」だったのだろう。
コミカルでもKawaiiでもなく、成長を支える屋台骨になる骨太な正統派楽曲。
一過性の流行ではなく、さらに先の未来まで歌い継いでいくという決意が込められた曲調と歌詞。
これからさらに大きくなっていこうとするラフラフのメンバー・スタッフ・ファンの心理的支柱になる、ブレない賛歌(アンセム)。
そして広がった先で出会う新たなファンに渡す「これがラフ×ラフです!」という新しい名刺。

今回のアルバムは生産・流通・視聴の負担が提供側にも購入側にも発生する初のCD販売。
そして3月にはZepp Yokohamaという大箱での単独ライブ。しかもデビュー日のアニバーサリーライブとはいえ平日月曜開催。
いずれもラフラフが次のステップ、より大きなステージに進むために課された試練だったはずだ。

しかしその試練をどちらも超えていこうとしている。
あれだけ動員に苦しんだのが嘘のように、アニラのチケットは新たな枠が発表される度に完売。
アルバムリリースイベントは前年同時期の「超めっちゃ”キュン”でしょ?」のリリイベが前方3列しか埋まらなかったとは思えない盛況。カメコの写真もSNSにたくさんアップされている。

「何満開」はラフラフがこれから咲かせる大輪の花を支える、支柱となる曲なのだ。

何万回のステップで
何万回のハミングで
自分を見失わないでここまで来た
だから
何満開の花よ咲け
何満開の花よ降れ
未来の実をつかむのは不安だけど
明日が急に変わるものでもない
大丈夫って笑っていて

ラフ×ラフ「何満開」より

「何満開」も収録された1stアルバム「わたしファンファーレ」。
これからラフラフを知りたい人には過去楽曲も含め全23曲(2枚組)収録のTYPE-Bがおすすめです。


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