ホラーショート 「スクリーンタイム」
「スクリーンタイム」
※フィクションです。
一人暮らしを始めて二年。
この部屋は静かで気に入っていた。
変なことなんて、一度もなかった。
最初の違和感は、ほんの些細なことだった。
朝、歯を磨こうとして歯ブラシを手に取る。
少し湿っている。
「昨日の夜、ちゃんと乾かなかったのか。」
気にも留めなかった。
数日後。
冷蔵庫の麦茶が減るのが早い気がした。
でも暑い時期だ。
自分でもよく飲んでいる。
そう思って終わった。
その週の土曜日。
掃除をしていると、ベッドの下から髪の毛が絡まった輪ゴムが出てきた。
私は髪が短い。
輪ゴムなんて使わない。
「前の住人のかな。」
ゴミ箱へ捨てた。
それから何日かして。
夜中に目が覚めた。
喉が渇いていた。
キッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。
麦茶を注いでいると、ふと違和感があった。
シンクの水滴。
誰かが、ついさっきまで水を使っていたみたいに残っていた。
私はその場で動けなくなった。
蛇口をちゃんと閉め忘れたんだ。
そう思い込んで寝室へ戻った。
翌朝。
スマホに通知が届く。
「今週のスクリーンタイム」
暇つぶしに開いてみる。
一番長く使っていたアプリ。
カメラ 3時間12分
「……は?」
私は写真なんてほとんど撮らない。
今週、カメラを開いた記憶は一度もない。
不具合だろう。
そう思って、使用履歴を開いた。
最後の利用時刻。
昨日 午前2時41分。
ちょうど、
私が喉が渇いて起きた時間だった。
胸がざわついた。
何か確かめたくなって、カメラロールを開く。
新しい写真は一枚もない。
動画もない。
全部いつも通り。
「やっぱりバグか。」
そうつぶやいて閉じようとした。
そのときだった。
画面の下に、
普段は見ないアルバムが一つ増えていた。
「最近削除した項目」
何気なく開く。
そこには、
昨夜の時刻と同じ、
午前2時41分に削除された写真が並んでいた。
全部で48枚。
私は震える指で、一枚だけ復元した。
写真が表示される。
暗い寝室。
ベッド。
眠っている私。
撮影者は、
ベッドのすぐ横に立っていた。
