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社員戦隊ホウセキ V ザイガ外伝/第1話;公安

 これは、ジュエランドがニクシムの進攻を受ける数年前の話。

 この頃のマ・ツ・ザイガは成人になって数年しか経っておらず、まだ公安職の長ではなかった。


『ナイカ地区で事件発生。不労民らしき集団が、託児施設を占拠しました。施設内には子どもが残っており、犯行グループの人質になっています。犯行グループは武器を所持しています』

 事件発生の通報を受け、ザイガは公安職の本部から出動した。現場への足に使うのは、バイクのような乗り物。黄金の車体が煌びやかに輝いている。乗り手のザイガはイマージュエルの力で変身していて、黒い戦闘スーツが黄金の車体を引き締めていた。
 ザイガの後ろには、白銀のバイクが続く。乗り手は空色の戦闘スーツを身に纏っている。戦闘スーツのデザインは、ザイガのものに似ていた。

 バイクはエンジン音を立てない。イマージュエルの力で車輪を回転させることで、走っているからだ。代わりに、甲高い叫び声のような音を鳴らしている。サイレンである。この音を聞くと、町のジュエランド人たちは脇へ引っ込み、ザイガたちの道を開ける。お蔭でザイガと相棒は、足止めを受けることなく目的地へと進むことができた。


 本部を発ってから程なくして、ザイガと相棒は目的地に着いた。
 石造りの民家が立ち並ぶ町から少し離れた場所にある、黒い鉄柵に囲まれた広い庭を構えた施設だった。庭には水晶のような実を付けた【タマノエ】が何本も植えられている。庭の真ん中には建物がある。平屋だが大きく、純白の大理石の壁と赤銅色の三角屋根が煌びやかだった。
 鉄柵の周囲には簡素な鎧を身にまとい、腰に剣をぶら下げたジュエランド人が何人もいて、庭の中を睨み付けていた。彼らはジュエランドの公安職の者である。

 ザイガと相棒は施設から少し離れた場所にバイクを駐め、鉄柵の近くまで歩いて行った。そして、現場に張り込んでいる公安職の者に話し掛けた。

「状況はどうだ?」

 ザイガに話し掛けられた者は、鉄を叩くような音を鳴らしながら振り返り、耳鳴りのような音を鳴らしながら深々と礼をした。

「お疲れ様です、マ・ツ・ザイガ。犯人は四人。この土地での永住権を自分たちに渡せと要求しています。応じないのならば、子どもたちを殺害すると。奴らは銃を二丁持っています。施設を占拠する際に、子守の者が射殺された模様です」

 話を聞いてから、ザイガと相棒は柵越しに施設の中を覗き込んだ。庭の片隅には大人のジュエランド人が二人、斃れ伏していた。一人は胴体に風穴が開いていて、もう一人は側頭部が抉られていた。無残な姿を見て、ザイガと相棒の体から、雨のような音と湯の沸くような音が鳴る。

「犯人たちは不労民と聞いているが…。満足な光を浴びる為なら、人の命を奪うことすら厭わないのか」

 ザイガはジュエランド人だから、その言葉は音の羅列。感情は籠らない。代わりに、体が音を鳴らして感情を表現する。ザイガは犯人たちの所業に怒り、殺された者を悼んでいた。
 空色の戦闘スーツを着た相棒も殆ど同じ音を鳴らしていたが、彼は同時に軋む歯車のような音を鳴らしていた。先に居た公安職の者がそれに気付き「何か?」と訊ねると、彼は言った。

「被害者の体の損傷を見るに、使われた銃は公安職の武器であろう。内蔵したイマージュエルの力を、光弾に変えて撃ち出すものだな。不労民の想造そうぞうりょくで銃のイマージュエルの力を引き出せたとは、不可解だな」

 不労民とは、想造そうぞうりょくが一定の水準に到達しなかったジュエランド人である。想造そうぞうりょくが弱ければ、イマージュエルから充分な力を引き出せない。彼が疑問を抱くのは当然だった。簡素な鎧を纏った公安職の者は、軋む歯車のような音を鳴らした。

「私たちの頃より人が減っていますから、役職者の水準も下がっていまして…。私たちの頃なら不労民になっていたような者たちでも、今では役職者になれてしまうんです。ですから最近の武器は、弱い想造そうぞうりょくでもそれなりの力が出るよう、細工されているのです」

 喋っていると簡素な鎧を着た者は、湯の沸くような音や風のような音も体から鳴らし始めた。

「最近の若者の水準の低下には、悩まされたものです。そんな調子だから不労民に武器を奪られて、悪用されるんです」

 彼の話を聞いていると、空色の戦闘スーツを着た相棒の体から響く湯の沸くような音が大きなった。それこそ、他の音を掻き消すくらいの音量に。

「最近の若者と、多数の者を十把一絡げにするな。そこまで言うなら、お前はこのイマージュエルと交信できるんだろうな?」

 彼はそう言って、愚痴を吐露した公安職の者に自分の右手を突き出した。銀のブレスレットを手首に巻いた右手を。右手のブレスレットには、アウィナイトのように澄んだ空色の宝珠が鮮やかに輝いていた。
 彼に詰め寄られて、愚痴を吐露した公安職の者は、耳鳴りのような音を鳴らして何歩か後退する。かなり険悪なムードになったが、ここはザイガが仲裁した。

「レキル、やめろ。仲違いをしている場合ではない。お主も、言葉遣いには気を付けろ」

 ザイガは二人の間に立ち、両者とも諫めた。これで二人とも鎮まった。

 紹介が遅れたが、ザイガに同行している空色の戦闘スーツを纏った者は、ブ・チ・レキルという公安職の者だ。年齢はザイガと同じで、役職者の試験に上位で合格した。特殊なイマージュエルを授かり、今は公安職の特命隊員として、ザイガの相棒を勤めている。立ち位置だけでも、レキルが高い能力を持った若者であることを窺い知れた。


 諍いを諫めたザイガは、柵の向こうの施設に睨みを利かせる。

「犯人は四人で、武器は公安職の銃が二丁。そこまで厳しい事案ではないな」

 数秒だけ小さく歯車のような音を鳴らした後、ザイガはそう呟いた。

「レキル、行くぞ」

 ザイガはそう言うと、跳躍した。高々と跳び上がったザイガは簡単に柵を超えて、施設の敷地に足を踏み入れる。

「お待ちください、マ・ツ・ザイガ。強行突入ですか?」

 レキルも柵を飛び越し、ザイガと同じく施設の敷地に飛び込んだ。

「強行突入ではない。暴力で穏便に捻じ伏せるぞ」

 ザイガの体は、鈴のような音を鳴らしていた。それを聞いて、レキルも鈴のような音を鳴らす。

「それが一番てっとり早いですね」

 レキルはザイガの思惑を把握しているようだった。
 漆黒の戦闘スーツに身を包むザイガと、空色の戦闘スーツに身を包むレキルは、静かに歩きだす。四人の犯人が子どもたちを人質に取り、立て籠もっている建物の方へと。


第2話へ続く!


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