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母の手料理~女子の生き様~

私の父は大変な偏食家だった。まず、豚肉と鶏肉が食べられない。なぜなら、父は幼少の頃、ブタや鶏を飼っていたので、すっかり情がわいてしまってかわいそうで食べられないのである。
そして、野菜が食べられない。味噌汁にネギが入っていると食べられない。玉ねぎも食べられない。食べられる野菜は唯一ブロッコリーだけ。どんはれ家の食卓にはいつもゆでたブロッコリーばかり出てきた。父は飽きたといってそれさえも食べようとしなかった。

一体なにを食べて生きていたのか、不思議に思うほどである。確か、インスタントの焼きそばとか、お饅頭とか、ジャンクフードかお菓子を食べていたように記憶している。
だから、早死にしたのだと私と母はそう言い合っていた。

思えば、母は決して料理上手とは言えないまでもいろいろな料理を作ってくれていた。
レンコンと鶏肉のがめ煮とか、サツマイモとピーマンとシイタケの天ぷらとか、いろいろ作ってくれていたのだが、いまいち覚えていない。私は父の偏食ぶりを見て、母は料理が下手なのだと思い込んでいた。

母の手料理を食べていたのは私しかいなかったのだ。ときどき、母に「お母さん、これおいしいね」と言ってしまうと毎日その同じ料理ばかりが出てくるようになるので、私も母の料理をあまり褒めなくなった。

現在、母は認知症になってしまった。見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わうなどの五感がおかしくなってしまっている。私の手料理も「うまなか、うまなか(おいしくない、おいしくない)」と言って食べようとしない。
食が細くなり、免疫力も落ちて肺炎で入院してしまうほどだ。

母にはもっと元気なときにいろいろ美味しいものを食べに連れて行ってあげればよかったと後悔している。
母の手料理を食べる機会はもうないだろう。しかし、私の記憶の中にその味を留めておいて自分の料理に生かしていくしかない。


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