有川ひろの「明日の子どもたち」を読んだ感想
児童養護施設を舞台に繰り広げられる子どもたちの成長物語。
かわいそうな子どもたちでは終わらない子どもたちの心情を丁寧にすくい取っている。
高校卒業後、進学するかどうかも施設の子どもたちにはリスクが大きい。進学後、肺炎で入院したことによって退学に追い込まれた女子がいた。
夜の世界に身を持ち崩したと思いこまれていて、施設職員の先生は後悔をしていた。退所後は就職を強く推薦するようになる。
経済的に自立することを第一に考えさせられる子どもたち。一般家庭とは明らかに違っていて不利な状況である。
その後、女子は自衛隊に進み、自らの道を切り開いていたことがわかり、ホッとした。
進学に無理解な親に苦しめられる子どもがいたり、子どもたちの状況は厳しいものがある。しかし、進学する選択肢を提示しないまま、就職させるのはどうかと思う先生たちもいて、若手とベテランが対立することも話として出てくる。
子どもたちにとってなにが最適か真剣に考えるからこその対立も描かれている。
親のいない子どもたちを育てることは本当に難しくて大変である。施設職員は家族ではないので、子どもたちを目いっぱい甘やかせることはできない。一般家庭では許される体験を施設の子どもたちは受けられない現実がある。
冒頭の子どもたちの靴をそろえて下駄箱に入れる行為でさえ、一般家庭では親がやってくれることを施設の子どもたちにはやらないでいる。
それは、施設でのルールであり、子どもたちの自主性を育てるのには必要なことになってくる。
新人の職員はそこから教育されていく。子どもたちは大人の愛情を試す行動に出る。それは、一般の子どもに比べると距離が近く、べたべたと甘えてくるものもいる。
自分にとって敵か味方なのかそれを確かめるためだ。
施設職員はその試し行動に振り回されてはいけないのである。
かわいそうな子どもたちを助けたいと思って入ってきた新人職員は、偽善者と言われてしまう。
施設の子どもたちは施設で普通に生活しているだけなのにかわいそうと思われるのは、職員側の傲慢かもしれない。
その職員も子どもたちとの触れ合いとともに成長していく。成長するのは子どもたちばかりではない。
明日の子どもたちは明日の大人たちでもある。子どもたちは未来を担う大人へと成長していく。
自分一人では何もできなかった子どもたちはやがて大人になり、社会へと働きに出る。
高齢者が多いから高齢者の意見が通り易くなり、政治は子どもたちへの投資ができないでいる。そこの問題点もこの物語は指摘している。
退所後の支援施設が閉所の危機に見舞われたり、政治の世界での子育て支援が縮小されてしまっている現代において子どもたちに投資できない社会はそのまま社会の縮小を意味する。
未来の子どもたちに自分がなにができるのか考えなければならない。一人の大人として子どもたちを支える手助けがしたい、そう思わされる物語だった。

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