檸檬も書けない。
ある朝、洗濯機にいつも通りに突っ込んでスイッチを入れた。
風呂の湯を抜き、洗面を洗い、洗濯機の進捗を確認すると、洗剤の文字が赤く点滅している。
うちの洗濯機は洗剤・柔軟剤自動投入式だ。
洗剤がなくては洗えない。
タンクを取り出さずに急いで液体洗剤を注いだ。
その瞬間、
あーーーーーーーーぁぁ、
柔軟剤の容器であった。
白の柔軟剤の容器に、白の柔軟剤が入っていたが空に見えた。
一時停止もせずにガサツにぱっと見で判断した結果がこれだ。
一瞬、洗剤混じりの柔軟剤だとて、少量溶かした水で濯ぐなら問題ないのでは?と頭を掠める。
でも待て…かゆみが発生したり、あるいはニオイが強めに残るとか……だめ。ないわ。
何よりもこのなかでポッテリと粘度が上がって固まったら厄介だ。
たっぷりの柔軟剤にたっぷりと注いだ洗剤の、あってはならない出会い。
私は悔しさに身悶えしながらその液体を処理しなければいけなかった。
冷静に一時停止を押し、タンクを外して蓋の文字を確認していればこんなことにはならなかった。
自動投入のタンクを一瞬で見分けるのは、
私には難しかった。
グレーか水色だけで瞬時に判別するなど無理な話。

判別のハードルが高すぎる
この洗濯機は実は新入り。
ある日、洗濯機の床が水浸しになっていた。
6年使った洗濯機で、スイッチを入れると洗濯の量が多いも少ないも関係なく断固として70Lを示す。
そのため手動で水量調節していた。
6年は微妙で、保証期限は切れているし、7年を目安に買い替えと本体に記載がある。
見積もりと運搬だけでも修理費がかさむ。
おまけに水漏れときた。
こりゃ買い替えたほうがいいなと話し合い、コイツを迎えた。
その後また水漏れしたので、排水口の詰まりか?と疑ってみたが、違う。
蛇口の付け根からポタリ…ポタリ…と滴っていた。
結局パッキンの劣化が原因であった。
まだ使える洗濯機を手放し、今欲しくもない洗濯機を買う羽目になったことを激しく恨み、さらにはパッキンの交換費まで発生し、ヤケクソになっているときにこれだ。
コイツと仲良くやっていくしかない。
でも、いつかまた私は間違える。
そうだ、蓋にマスキングテープで色分けして分かりやすくすればいいのだ。
天才か?!
夫の仕事で中途半端に余ったマスキングテープを私は何種類か取り揃えてある。
その中から青のと、ピンクを見繕いカットした。
青に「洗剤」とマッキーで記入する。
次にピンクに。
じゅうなんざい…ん?
じゅう?
え?
久しく文字を書いていない。
じゅうの文字が出てこないのだ。
予、ん?あれ?うわ~〜〜ん。
目には涙があふれてきた。
「よ」に近いあの…
「予」さえ怪しい。
辛っっ。
調べてそうだった、これだ、これ。と納得するが、悔しくて仕方ない。
なぜこんな簡単な文字を忘れた?!
なぜか檸檬は書けるのに、なぜ柔軟剤を書けないのだ?
嘘をついた。
檸檬も書けない。
情けなくて、私は掌に爪が食い込むほど拳を握ってはいない。
目は見えないし、字は忘れるし、オイオイ…

