市街地極秘任務。母、迷彩リュックで行軍す。
黒に浮かぶ『SDカードの異常を検出しました』この画面から私は徒歩軍と化した。
5月3日に納車した、11年落ちの娘の中古車。
ドラレコ付きだが個人情報の観点からSDカードは付属しなかった。
「初心者なんだから、もしもの時の録画時間は長い方がいい」
インターネットに乗って密林に降り立つ空挺部隊は標的を探す。
「128GB…おっと、、SDカードってこんなにするのか?!」
敵に怯んだ私は容量だけは確保しつつ、そのなかでも安い方の『SanDisk microSD 128GB UHS-I U1』を入手した。
その日の夕方、娘が帰還してすぐとりあえずそれを差し込んだ。
運転二等兵の娘は、親から入れてもらったSDカードを信頼しきっている。
画面が黒いままだとしても気づかない。二等兵ゆえの過失とはこういうものだ。
二等兵からの報告も無かったため、上官である私も普通に作動しているものとばかり思っていたのだが、
日曜、連隊で山形まで運転を交代しながら二等兵の練習も兼ねて演習に出かけたわけだ。
そこで初めてこのSDカードが破損していることを知る。
何度入れ直しても画面はエラーのまま。

帰宅後、私のスマホからSDカードを外して装着してみたところ、表示はエラーから『フォーマットしてください』に変わった。
「あ〜…初期不良か。」
密林に速攻で後送手続きを取った。
そして密林の画面には返送用QRコードがデカデカと表示された。
最新鋭のシステムC4ISR搭載の密林は私の理解が追いつかない。
「なんだと?!ネコピットだと?!コンビニにはないだと?!」
ヤマト営業所までは2km。
ホルムズ海峡閉鎖による日本の石油備蓄が気になるところ。ポテチの袋さえモノクロになるというではないか。
2kmの悪燃費走行に、この貴重な石油を消費して良いものか?
私の脳内戦略会議が開かれた。
私は近々徒歩キャンプを予定している。
その演習として歩くのもありなのでは?
ならばついでに食料の調達もしようではないか。調達先はネコピットから1.2km先にある。手提げはキツい。
背嚢だ。
私が所有する背嚢は最新鋭のキャンプ用45L。あまりにもオーバースペックだ。
妥協の末にクローゼットから出庫したのは、娘が小学生の頃に使っていた迷彩柄のリュック。小学生の可愛いらしい服装にこのリュックはアクセントになり、なかなか似合っていたのだが。
50代の私が市街地で背負うには、あまりに視認性が高すぎる一品だ。だが、背に腹は代えられない。この背嚢を背負うしかない。
「これが私のデフォルトだ。」
そう思い込み、堂々と歩くことで違和感をカモフラージュできるのではないか?
その信念を胸に、ベージュのトレーナーにボトムはデニムで迷彩を背負い、私は家をゼロ発進した。
気温は低いが、歩幅を広げれば額に汗がにじむ。
行軍から2km地点でヤマトに着到、無事に後返任務を完遂。
さらに1.2km先のスーパーまで足を伸ばし、夕飯用の食料を背嚢に詰め込む。
結局、全行程5km弱、2時間に及ぶ行軍。
無事帰還した私の足は疲労による浮腫により、衛生部隊を要請したいほどだった。
後に判明したことなのだが、古いドラレコでは128GBはオーバースペックでエラーはそのせいだとわかった。32GBが限界らしい。
また、書き換えが頻繁なドラレコには高耐久性でないと秒で殉職するらしい。
また私は密林へ空挺する。
