FreeCAD板金モデリング実例 #09 ― 展開図まで作れる板金構造の設計例
本記事ではFreeCADを用いた板金構造のモデリング例を紹介します。
板金加工会社からのCAD作成依頼を想定し、展開可能な板金構造をどのような構成で作るかという観点でモデルを構築しました。第8回目です。
題材はYouTubeで公開されているSolidWorks向け板金チュートリアルを、FreeCADで再構築したものです。
本記事の主題は形状そのものではなく、板金構造をどのようなフィーチャー構成で組み立てるかという設計思考です。
モデル概要
題材
CAD CAM TUTORIAL BY MAHTABALAM
「Compressor Enclosure in SolidWorks sheet metal」
CAD環境
FreeCAD Ver. 1.1.1
モデル条件
・1枚の板材からの展開
・複数方向への立ち上げ
・ルーバー加工
このような板金構造をFreeCAD上で構築し、展開まで行えることを確認します。
モデルデータ
本記事で使用したFreeCADモデル、展開図DXF、および関連データはGitHubで公開しています。
GitHub:
https://github.com/itaqino126/freecadwork-009
実際のフィーチャーツリーやモデル構成を確認したい場合は、併せて参照してください。
モデリング戦略
このモデルの形状は、ゆりかごを想起させます。頭と足の向きにひさし状の通風孔があります。脚はついていませんが、ロープで吊るしてゆらゆらできそうな穴が空いています。こういう見立てで無機質なデザインに構造の意味付けを行いました。

モデル構築
本モデルの基本はゆりかごの構造です。一枚のパネルを作り、そこから前後の壁・左右の壁を作り、折り曲げの重なり部分を作り、穴あけ、ルーバー加工の順にモデルを作りました。
最初は、Part Design ワークベンチで、原点を中心で底板をXZ平面に作成しました。板金の厚みは5mmです。頭と足の方向に壁板を曲げで作り、トップの曲げ加工部分のの寸法拘束が取りやすいように、先に壁板の角をカットしました。
その後、横板を作り、前後の板との重なり部分を作ります。曲げの最後は前後の壁板のトップにある小さな曲げを作りました。これで曲げ加工は終わりなので、ここで一旦、展開可能なことを確認しました。
曲げ加工が終わったら、穴とトップの曲げ部分のカット部分を作成しました。ゆりかごは対称構造なので、対称や貫通を使うことでモデリングの作業が半分になるようにしました。
そして最後は前後の壁板にルーバーを作成しました。

展開(Unfold)とDXF出力
モデルが構築できたら、最後にSheet MetalワークベンチのUnfold機能を用いて展開図を作成し、DXF形式で出力しました。K-factorは0.5です。

モデルはゆりかごの底板の裏側から展開を行いました。
展開した板金の形状は、ルーバーのところが穴になっています。出力したDXFファイルでは穴とルーバーの穴は別の層になっています。
板金モデルでは、問題なく展開できるかどうかが構成の妥当性チェックになります。展開に失敗する場合は、
・曲げ順序の不整合
・フィーチャー構成の問題
・干渉の発生
などが、原因になることが多く、モデル構成は注意深く行う必要がありますが、このモデルでは特に問題は発生しませんでした。
SolidWorksチュートリアルとの構築差分
このモデルは箱型であるので、底板から壁を立ち上げていくのが設計の考え方だと思うのですが、Solidworksは板を横から見て曲げの線の形状から作ってます。FreeCADでは実際の板金加工を行うのと同様に板から作っていく方法を採りました。

このモデルの特徴はルーバーが並んでいることですが、一般的な板金ではよく見られます。FreeCADではルーバーの位置合わせはドットや円を描いたスケッチで使います。8個の円をスケッチで描いてルーバーを配置しました。

まとめ
このモデルで、FreeCADでSolidWorksと同様の展開可能な板金構造を再現できました。
板金モデリングでは、
「形を作る」よりも「展開できる構造を定義する」ことが設計の肝なので、
・モデルの安定性に大きく影響するフィーチャー順序を設計
・チュートリアルの操作をなぞるより、設計思想をモデルに移植
が重要です。
今後も商用CADチュートリアルを題材に、板金構造の設計をFreeCAD上で検証していく予定です。

板金モデル作成のご相談
FreeCADを用いた板金モデル作成のご相談を受けています。
対応可能な作業
2D図面からの3D板金モデル作成
展開可能な板金モデルの構築
DXF展開図作成
試作検討用のCADモデル作成
X(Twitter)またはnoteからお気軽にご連絡ください。
