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【3つのお題で紡ぐ御伽噺】

🎈お題①:「月に帰れなかったかぐや姫」
🐾お題②:「七つ目の井戸」
⏳お題③:「風を集めるおばあ」
 
フィリピンの、小さな村の話です。
貧しくとも、村人は争わず、神に感謝して明るく暮らしておりました。夕刻になれば、村人は集まり、竹を打ち鳴らすバンブーダンスを楽しむのが日課です。

ある夜、村が眠りについたころ、月の光が一本の竹へすうっと吸い込まれていきました。それを見ていたのは、無口な少年デマンドだけでした。

その日から、夕暮れのダンスの時間になると、どこからともなく美しい少女が現れ、皆に交じって見事な足さばきで踊るようになりました。

村人が名を尋ねても、少女はにこにこと笑うばかり。
踊りが終わると竹林へ入り、光に包まれて消えてしまいます。
村人は彼女を「リュミエル」と呼びました。

📝リュミエル=光(かぐや)

【七つ目の井戸】
村には昔から七つの井戸があり、乾いた土地なのに水が絶えませんでした。
六つの井戸は村を囲むように有りましたが、
七つ目の井戸だけは、竹林の奥、リュミエルが消える場所のそばにありました。

其の井戸は新月の夜には悪鬼が宴を開くという言い伝えがあり、村人は戸締りをして早く眠りに就くのでした。

井戸のそばの小高い丘には竹が密生し、いつもザワザワと風が鳴っています。丘の一角に大きな洞窟が有りました。

【風を集めるおばあ】
秋の収穫前、強風の季節が近づくと、村人は丘の洞穴を訪ねます。
そこには“風を集めるおばあ”が住んでいました。
洞穴の奥には、風を詰めた袋が山のように積まれています。
パンパンに膨れた袋もあれば、まだ口を開けたままのものもあります。

「おばあ、今年の風は強いかね」

「いんや、こどしば、そげんな風はふがねえど。安心されたがよかろう」

「じゃあ、夏の暑さはどうじゃろ」

「こどしば暑いけんど、おらにまがせどけ。悪いようにはせんて」

村人が安心して帰っていく背中に手を振る“おばあ”の姿は―― 実は仮の姿。

本当は女ざかりの三十代の美しい女性で、その昔、月の王子と恋に落ちた為に、風神の父に勘当され、この山に籠る罰を受けていたのでした。

🌕【月に帰れなかったかぐや姫】
やがて、リュミエルのもとに月の使者が訪れました。
彼女は月の王の娘。縁談から逃れ、地上へ降りてきていたのです。

使者に向かい「わたくしは月へは帰りませぬ。
デマンド様と別れるのは嫌でございます。
地上の者と枝を交わせし身の上ゆえ、尚の事、月に帰れませぬ」

使者から、その知らせを受けた月の王は嘆きながらも、愛娘の住む村へ様子を見に降り立ちました。

「なんと慎ましいげな暮らしよ。だが、月出をした身ならば仕方あるまい」

「父上、わたくしは贅など望みませぬ。
デマンド様と暮らせれば、それで幸せでございます」

「フムフム」と頷く王の目には涙が滲む。

王はリュミエルに尋ねました。
「このあたりに“おばあ”と呼ばれる者はおらぬか」

「はい、風を扱う方です。竹山の洞窟におられます」

其れを聞いて、月の王はリュミエルの耳元にそっと囁きました。
「誰にも言うでないぞ。実はわしは、あの者の恋人だった王子なのじゃ」


その後、村は災いに見舞われることもなく、 人々は穏やかに暮らし続けました。
そうそう、七つ目の井戸の言い伝えは唯の伝説。

そこで、月の王が薬効の女神パナケイアを呼び寄せ新月の夜にのみ湧き出す水を病人に飲ませると万病が治る術を授けて貰らいました。
以降、其の井戸は屋根を付けて大切に保存されておりました。

夕陽が海に沈み、空の青さと混じり合うころ、 今日もバンブーの打ち合う音が響きます。

リュミエルとデマンドの子供たちも踊り、 時には“おばあ”も艶やかな本来の姿で輪に加わるのでした。

フィリピンのバンブーダンス。

#3つのお題に空想のひらめきを
#片桐みかんさん企画


かぐや姫、現代風に舞台はフィリピンの貧しい村に移して3つのお題を使い切り創作してみました。🙇‍♀️

片桐みかん様の楽しい企画につられて臨時投稿させて頂きました。

有り難う御座いました。