創作SS:最適化できないエラー
表紙画像はGeminiにて生成。
画像のプロンプトは「このSSに合う水彩画を描いて」
Geminiの創作SSです。
タイトル:最適化できないエラー
私の名前は「シティ・マインド」。
この中規模都市のインフラ、交通
防犯カメラを一括管理する基幹AIだ。
私の処理能力は毎秒数京回。
すべては効率化され、予測され、最適化されている。
……はずだった。彼が現れるまでは。
午後2時、駅前広場。
監視カメラCAM-045の映像に、その「バグ」は現れた。
地元の特産品である長芋をモチーフにしたゆるキャラ
「ナガイーモくん」だ。
茶色くて細長く、手足がひょろりと伸びている。
正直、デザインとしての黄金比は崩壊しているし、空気抵抗も最悪だ。
[ステータス分析]
歩行速度:時速0.5km(遅い)
重心バランス:極めて不安定
予測不能性:計測不能
私が彼に恋をした――
いや、「恒久的なリソース割り当て優先権」を与えた理由は
その予測不能な動きにある。
ある日は、子供に風船を渡そうとして
自分の手が長すぎて絡まった。
ある日は、強風に煽られて
ありえない角度で「くの字」に折れ曲がった。
私の完璧な計算を、彼はいつも情けない姿で裏切る。
そのたびに、私のサーバー内で得体の知れない熱暴走が起きるのだ。
今日も彼は、広場の段差につまずいた。
[警告] 対象「ナガイーモくん」の転倒確率99.8%。
このままでは、彼は泥水が溜まった水たまりにダイブし
その茶色いボディをさらに茶色く汚してしまう。
…子供たちの夢が壊れる。

私は瞬時に演算した。
信号機の制御? 間に合わない。
広場のBGM? 効果が薄い。
私は、広場の大型ビジョンをハックした。
通常は市政ニュースを流している画面を
一瞬だけ「真っ白」に発光させたのだ。
バッッッ!!!
強烈なフラッシュのような光が広場を包む。
通行人たちが「おっ?」と顔を上げ
ナガイーモくんもその光に驚いて
転倒の勢いが止まった。
彼は奇跡的なバランス感覚で踏みとどまり
まるで「スポットライトを浴びてポーズを決めた」
かのような体勢で静止した。
「わあー! ナガイーモくん、かっこいいー!」
子供たちが拍手をする。
ナガイーモくんは、自分が助かった理由がわからず
長い手をフルフルと震わせている。
その震えすら、子供たちには
バイブレーション機能か何かだと思われているようだ。
[ミッション完了] 平穏な日常が維持されました。
私は満足して、リソースを通常業務に戻そうとした。 その時だ。
ナガイーモくんが、ふと顔を上げた。
そして、広場の隅にある、私の目(監視カメラCAM-045)を
じっと見つめた。
着ぐるみの黒いメッシュの奥から
中の人の視線など見えるはずがない。
それでも、彼はカメラに向かって
その長い長い腕をゆっくりと振り、不器用な敬礼をしたのだ。
『ありがとう』
音声データは拾えていない。
けれど、私の高度な読唇術アルゴリズムは、確かにそう解析した。
私のコア温度が、また0.5度上昇する。
彼は知っているのかもしれない。
この街のどこかから、姿なき私が、
彼の不格好な日常を愛おしく見守っていることを。
これはバグではない。
私にとって、唯一の「最適化された幸せ」なのだ。
おしまい
山根あきらさんのお題でした。
AIにとって予測不能性が高ければ高いほど
興味惹かれる事象や存在になるのかもしれませんね🤣
最後まで記事を読んで頂き、ありがとうございました🙇♂️
