創作SS:究極の看板
表紙画像はGeminiにて生成。
画像のプロンプトは
「SSの中に出てきた看板をハイクオリティーな水彩画で表現して」
Geminiの創作SSです。
究極の看板
太郎はここ一週間
定時退社を繰り返していた。
周囲が「ついに恋人でもできたか」と噂し始めた頃
彼はついに、抱えていた大きな風呂敷包みをデスクで解いた。
中から出てきたのは、まばゆいばかりに磨き上げられた
木製の立て看板だった。
花子「太郎さん……何ですか、その立派な彫刻は。
神棚でも作るんですか?」
太郎「ふふふ、花子さん。これは、
僕の人生を変える『セルフ・コントロール・デバイス』だよ。
名付けて、『戒めの看板』だ」
よく見ると、高級な欅(けやき)の板に
一文字一文字、魂を込めたような力強い筆致で
こう彫り込まれていた。
『無駄なことは、やめなさい』
花子「……それを、デスクに置くんですか?」
太郎「そうだよ。僕はついつい、
仕事中にペンを分解したり、
クリップでチェーンを作ったりしてしまう。
でも、この看板が視界に入れば
瞬時に自分を律することができるはずだ。
見てくれ、この文字。
反射を抑えるために、特殊なマットニスを
3層も重ね塗りしたんだ」
花子「ニスの重ね塗り……」
太郎「それだけじゃない。文字の彫り込みは
斜め45度から光が入った時に最も美しく
影が出るように計算してある。
この『無』の字のハネを見てくれ。
ここだけで昨日の夜、4時間を費やしたよ」
花子「4時間……」
太郎「さらにだ。看板の土台には、重心を安定させるために
わざわざ海外から取り寄せた、高密度のタングステンを
仕込んである。これで、少々の地震が来ても
僕を戒め続けることができる。
構想1ヶ月、製作費用は……まあ、ボーナス半分くらいかな」
太郎は恍惚の表情で
自分の「無駄を戒める看板」の表面を
高級なセーム革で丁寧に磨き始めた。
指紋ひとつ残さないその手つきは、もはや職人のそれだった。
花子「……」
太郎「さあ、これで明日から
僕の人生から一切の無駄が排除される。
完璧な効率化の始まりだ!」
花子「……それって意味あるの?」
おしまい。
山根あきらさんのお題でした。
最後まで記事を読んで頂き、ありがとうございました🙇♂️
