安い仕事ほど、なぜか頑張ってしまう人へ
Moneypenny File|思考の武器(RE:ARM)#26
少し、いやな話をするわね。
本当は逆であってほしいのに、なぜか安い仕事ほど丁寧にやってしまう。
高い仕事のほうが大事なはずなのに、気がつくと、単価の低い案件のほうに神経を使っている。
言い回しを何度も直す。
頼まれていないところまで整える。
資料も、つい過剰にきれいにする。
そこまでやっても、値段はほとんど変わらない。
でも、手を抜く気にもなれない。
……心当たり、ないかしら。
私はずっと、これを性格の問題だと思っていたの。
真面目だからとか、
不器用だからとか、
ちゃんとやらないと気が済まない質だからとか。
でも、現場で長く見ていると、どうもそれだけじゃない。
むしろ、きちんとやる人ほど、同じ罠にきれいにはまっていくのよ。
雑な人が損をするんじゃない。
丁寧な人が、きれいに消耗していく。
これ、なぜだと思う?
答えは、腕ではない。
位置よ。
正確に言えば、決定権からの距離。
値段を決める人が遠い。
何をもって評価されるのかが見えない。
しかも、代わりはいくらでもいる。
こういう仕事に入ると、人は途端に「守り」の動きを始めるわ。
どこを見られているかわからない。
どこで減点されるかも見えない。
だったら、せめて丁寧にやるしかない。
そうなるのは当然なの。
性格が弱いからでも、ビジネスセンスがないからでもない。
構造に対する、まっとうな反応よ。
正解が見えない場所では、人は丁寧さで埋めようとする。
だから、安い仕事ほど時間がかかるし、
必要以上に整えたり、何度も直したりする。
そのわりに、報酬は動かない。
残酷だけれど、そういうことは起きるの。
私も、この罠にはまっていたわ。
決定権から遠い場所で、丁寧にやることで何とか埋めようとしていた。
評価が見えない不安を、作業量で埋めていたの。
きれいに。真面目に。お行儀よく。
でもね、いくら整えても、値段は動かなかった。
今ならわかる。
あれは、腕の問題じゃなかった。
届かない場所で頑張っていただけだったのよ。
ここ、かなり大事だから、もう一度言うわね。
丁寧さが悪いんじゃない。
丁寧さが届かない場所でやっているのが問題なの。
もし、「安い仕事ほど、一生懸命にやっている」と同感したなら、
あなたは、決定権から遠い位置で、ムダに頑張っているってこと。
怖いのはここからよ。
こういう仕事を続けていると、人はだんだん
「もっと頑張れば変わるかもしれない」
という方向に入っていく。
もっと気を利かせて、先回りしたりしてね。
でも、その努力、届く場所を間違えていたら、増えるのは疲労だけよ。
だから必要なのは、丁寧さを捨てることじゃない。
使う場所を変えること。
誰が値段を決めているのか。
その人に届く位置にいるのか。
自分は、ただ作る人なのか、それとも判断を助ける側に少し寄れているのか。
まず見るべきは、ここ。
でも逆に言えば、位置が少し変わるだけで、同じ丁寧さの意味は変わる。
決定権に一歩近づく。
判断材料を渡す側に寄る。
「この人は何を助けているのか」が見える形にする。
やることは、そんなに派手じゃないけど、流れはそこで変わるわ。
今日の武器を一つだけ置いておくわね。
いま抱えている仕事を、一件だけ見てちょうだい。
誰が値段を決めている?
その人に、あなたの仕事は届いている?
それとも、途中で「感じのいい丁寧さ」として消えている?
ここが見えたら、次の動きは変えられる。
この話、実はいま書いている本のど真ん中でもあるの。
テーマは、「努力しても収入が増えない理由」。
まだ書いている途中だけれど、ようやく自分でも、昔の引っかかりが一本につながってきた感じがしているわ。
収入は、努力の量だけでは動かない。
どこにつながっているかで、報われ方は変わる。
だから、使う場所を見直せばいいだけ。
これが結論よ。

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