「数字、どうだった?」の一言がけっこう深い
Moneypenny File|思考の武器(RE:ARM)#27
少し、露骨な話をするわね。
テレビの現場では、同じ番組に関わっているスタッフ同士、朝いちばんのやりとりがだいたい決まっている。
「おはようございま~す」
「ところでさ、昨日の数字、どうだった?」
視聴率の話です。体感では、九割くらいはこれ。
もう枕詞みたいなものよ。
しかも、その結果しだいで、そのあとの空気まで変わるの。
どんより暗くなるか。
コーヒーをおごっちゃうくらい機嫌がよくなるか。
ただの挨拶じゃない。朝の空気を決めるスイッチでもあるのよね。
そんな挨拶に慣れていた私だけれど、通販番組をやるようになって、
このお決まりの挨拶が、ちょっとだけ変わったの。
「おはようございま~す」
「ところでさ、昨日の売り上げ、どうだった?」
露骨になったのよ(笑)。
いや、冷静に考えれば、最初から十分露骨なの。
視聴率だって立派な数字だもの。
でも、「数字」が「売り上げ」になった瞬間、急に逃げ場がなくなる。
何を見ているのかが、むき出しになるのよね。
視聴率は、まだ少し番組の顔をしているじゃない。
届いたか。見られたか。刺さったか。
そういう、いちおうの作り手としての体裁がある。
でも売り上げは違う。
もっと直球。
で、結局、いくら動いたの?
そこに一気に寄る。
ちょっと笑うでしょ。
でも、私は通販をやって、この露骨さにずいぶん教えられたわ。
人は、自分が毎日見ているものを、つい先に口にするのよ。
視聴率を先に聞く人。
売り上げを先に聞く人。
反応を気にする人。
段取りの乱れを気にする人。
説明の通り方を気にする人。
何を最初に聞くかで、その人が仕事のどこを見ているかが、かなりそのまま出る。
これは性格というより、立ち位置なのよね。
どの数字に責任を感じているか。
どの結果を先に見ているか。
どこで仕事を受け取っているか。
そこが違えば、同じ現場にいても、最初に出る言葉は変わる。
テレビの仕事を長くしていると、つい作る側の感覚で物を見てしまう。
流れは悪くなかったか。
説明は通っていたか。
出演者の温度は合っていたか。
現場の人間だから、そのへんはどうしても気になる。
でも、財布の近くにいる人は、そこをすっと飛び越えてくるのよ。
「で、数字は?」
「で、売り上げは?」
話が早いの。
情緒の置き場がない。
でも、あれはあれで正直なのよね。
仕事って、能力だけで決まるわけじゃない。
どの数字を見ている場所にいるかでも、ずいぶん変わる。
同じ会議に出ていても、
片方は説明の順番を見ていて、
片方はどこで離脱したかを見ていて、
もう片方は、それでいくら動いたかを見ている。
どれも仕事。
どれが上とか下とか、そういう話じゃないのよ。
ただ、財布に近い数字を見ている人ほど、仕事の見え方が変わる。
判断の仕方も変わるし、
挨拶まで変わるってこと。
だから私は、挨拶って案外あなどれないなと思っているの。
「おはようございます」の次に何が来るか。
そこに、その人の仕事観が出る。
もっと言えば、どこに接続しているかが出る。
軽い一言なんだけどね。
軽いからこそ、ごまかせない。
「数字、どうだった?」
「売り上げ、どうだった?」
あの一言、けっこう深いのよ。
人は、気にしている数字で、自分の立ち位置をしゃべってしまう。
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