職場のドレスコード
今の立場は零細企業の経営者だが、取引先の会社から業務委託を受け、その会社に出社している身でもある。
だからドレスコードについては、取引先に合わせるか、まあ、違和感のない範囲で納めるしかない。
週2日、ほぼフルタイムで出社している会社が1社あり、こうなると社内の雰囲気に合わせ、なるべく目立たぬようにしたい。
ここは経営者の号令でネクタイをするな、ということになっているが、100年以上の歴史のある製造業ゆえ、単にダーク目のスーツ上下に白のワイシャツ、でネクタイなしというのが一般的だ。
昭和にサラリーマンになった身としては、スーツにネクタイなしというのがなんとなく間が抜けている感じがして好きではないのだが、ここで一人だけネクタイをしていたりすれば、それはそれで目立ってしまう。
まあ、ネクタイなんて肩が凝るし、食事の時に邪魔だし、無いほうがすっきりするのだが、社会人40年で結構な数のネクタイが貯まっていて、さすがにもったいなくもある。
今は面接の時には人事の管理職もネクタイをすることが多いので、その日だけはネクタイをするが、月に2回ほどなので、1本あれば充分だ。
そんなわけで、服装的にはカジュアルにしたい気持ちは特にないが、足元は革靴は積極的に回避したい。
というのも、若い時のスパイクのせいで結構な外反母趾になっていて、たまに帰宅の途中靴を脱ぎ捨てたくなるくらいの激痛に耐えている。
若い人は知らないだろうが、昔阪急ブレーブス(現オリックス)に福本豊と言うレジェンドがいた。通算盗塁の1,065個は歴代1位。
彼が早く走るためにワンサイズ小さいスパイクを履いていたのは、「立ちションもできなくなるから」という理由で国民栄誉賞を辞退したことと並び有名な話で、僕は別に盗塁王を目指していたわけではないのだが(そもそも競技自体違うのに)、ワンサイズ小さいスパイクを使っていた。
今、過去の自分にひとつだけアドバイスができるとしたら、ちゃんとサイズが合ったスパイクにしとけ、と言いたい。外反母趾になったのは絶対にそのせいだ。
ラグビーのレジェンドで、松尾雄治という選手がやはりスパイクは小さ目がいいと言っていたような気がする。松尾はさらに、足の外側と内側のポイント(スパイクの歯?というか爪?)の高さを変えている、と言っていた。
外のポイントを内側より高くすることによって、鋭いステップが切れるというわけだ。
何事も形から入る僕は、それも真似していた。残念ながら全く効果がないどころか、僕のポジションはとにかく早く走ることが求められていて、そんな繊細なステップなど切った覚えはないし、もし早く走ることに特化するならポイントは長いに越したことはなかった気がする。
とにかく、その外反母趾のおかげで、革靴は40年来苦手としてきたのだが、我慢して革靴を履いて客先に向かう。
本当は僕の足元など誰も見ていないはずだし、自意識過剰だと思うのだが、「おっさんの癖に舐めた格好」と思われるリスクは回避したい。が、63歳にもなって、あまりの激痛に泣きながら帰り道を歩くのは我ながら情けない。
そう言えば、松尾は別の盗塁王とともに、ポーカー賭博で逮捕されていた。
その盗塁王は、謝罪会見に大きなトランプ柄のセーターで現れてひんしゅくを買っていた。
やはりドレスコードは大切だ。
