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なぜ同じビール会社なのに、4社はまったく違うのか──「競争資産」から読み解く酒類大手4社の戦略


暑い日が続いてます🥵ビールが進む季節ですね🍺

ところで私は日本ソムリエ協会のワインエキスパートでもあります。


もっとも、この頃は本人がそのことを忘れている時間のほうが長いですが 笑

最近はAIや修験道の話ばかりしているので、たまには資格を持っている自分を思い出すためにも、酒の話をしてみたい😅

今回取り上げるのは、ワインの味でも、ビールの銘柄でもない。

アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ。

同じ酒類売り場に並びながら、実はまったく違う未来をつくろうとしている4社の話である。

コンビニの酒類売り場には、日本の大手ビール会社が仲良く並んでいる。

アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ。

銀色の缶、金色の缶、青い缶、黒い缶。

こちらから見れば、どれも冷蔵ケースの中で「今夜、どれを飲みますか」と競っているように見える。

だが、少し視点を引いてみると、不思議なことに気づく。

同じビールを売っているはずなのに、4社が向かっている先は、ほとんど同じではない。

アサヒは、ブランドを抱えて国境を越えようとしている。

キリンは、顕微鏡をのぞき込みながら、酒類の外へ出ようとしている。

サントリーは、人がいつ、誰と、どんな気分で飲むのかを観察している。

サッポロは、北海道や恵比寿という土地に刻まれた過去を、もう一度未来の利益へ変えようとしている。

見た目は同じビール会社である。

しかし、企業の奥に入ると、4社は別の資産を持ち、別の方向へ進み、別の勝ち方を考えている。

酒類売り場で競っていて、実際には別のゲームもしているのだ。

商品が似ているほど、違いは商品以外に現れる

酒類会社の競争力と聞けば、製造設備、原料調達、物流、営業力などが思い浮かぶ。

もちろん、どれも必要である。

しかし、大手企業同士の競争では、工場は建てられる。設備は購入できる。製造技術も一定範囲までは模倣できる。量販店や飲食店の販路も大きく重なっている。

つまり、設備や商品だけでは、長期的な差別化をつくりにくい。

本当に重要なのは、その背後にある「短期間では再現できない資産」である。

それは、ブランドを育てた時間かもしれない。

研究者が積み重ねた知識かもしれない。

消費者の習慣を変えてきた経験かもしれない。

あるいは、企業の歴史と土地が偶然結びついて生まれた物語かもしれない。

アサヒが蓄積しているのは、世界各地でプレミアムブランドを展開するグローバル・ブランド運用資産である。

キリンが蓄積しているのは、発酵・バイオ研究、機能性素材、健康食品、医薬品をつなぐ科学技術資産だ。

サントリーが蓄積しているのは、水、熟成、広告、飲用提案、文化活動を一体化する生活文化形成資産である。

サッポロが蓄積してきたのは、北海道、開拓使、ヱビス、恵比寿といった歴史・場所・物語の資産だ。


4社の違いは、ビールの味だけにあるのではない。

何を蓄積し、それをどのように利益へ変換するかにある。


アサヒは、ブランドを世界で回す

アサヒを単なるブランド経営の会社と表現すると、まだ足りない。

より正確には、アサヒはプレミアムブランドを別の国へ移植し、再配置し、拡張する会社である。

Asahi Super Dryだけではない。

Peroni Nastro Azzurro、Pilsner Urquell、Grolschなど、異なる国と歴史を持つビールブランドを保有している。

普通に考えれば、イタリアのビールはイタリアで売り、チェコのビールはチェコで売ればよい。

しかしアサヒは、それらを本国市場の中に閉じ込めない。

イタリア発のPeroniを英国やアジアへ持っていく。

日本のSuper Dryを、欧州ではプレミアムな日本ブランドとして見せる。

Pilsner Urquellには、「ピルスナービールの原点」という歴史を背負わせて世界へ展開する。

ここで行われているのは、単なる輸出ではない。

ブランドの意味を、その国の消費者に合う言葉へ翻訳する仕事である。

まず、地域で確立したブランドを取得する。

そのブランドが、なぜ支持されているのかを分解する。

歴史なのか。デザインなのか。都会的な印象なのか。食事との相性なのか。

それを別の国の販売網へ載せる。

現地の大衆品より上の価格帯に置く。

販売数量だけでなく、単価とブランド認知を引き上げる。

そして、一つの営業網で複数のブランドを循環させる。

アサヒの本当の強みは、有名ブランドを持っていることではない。

ブランドを国境越しに収益化する経営技術を持っていることにある。

エノテカがアサヒに加えたもの

アサヒ傘下のエノテカも、この構造の中に置くと意味が見えてくる。

エノテカは、アサヒ全体の成長を担う中心事業ではない。

アサヒの主軸は、あくまでビールを中心としたグローバル・プレミアム戦略である。

ただし、エノテカはメーカーであるアサヒに、これまでとは異なる能力を加えた。

ワインの輸入、小売、EC、飲食店卸を結ぶ専門流通網。

高級ワインを買う、所得と商品関与度の高い顧客との接点。

そして、接客、品ぞろえ、提案、顧客理解という専門小売業の能力である。

ビールは、銘柄を決めて買う人が多い。

一方、高級ワインでは、「何を選べばよいか分からない」という顧客も少なくない。

そこで必要になるのは、単なる商品供給ではなく、説明、信頼、保存状態、仕入れ経路、専門知識である。

つまりエノテカが売っているのは、ワインだけではない。

「この店で選べば、大きく外さない」という信用
である。

アサヒにとってエノテカは、プレミアム消費者が何に価値を感じ、どのような説明なら高い価格を受け入れるのかを学ぶための、専門流通網であり、顧客接点であり、実験装置なのである。

もちろん弱点もある。

ブランドを世界規模で管理するほど、それぞれの土地に根差した文化が均質化する危険がある。

また、海外事業が増えるほど、為替、地域景気、買収価格、統合コストの影響も大きくなる。

それでも4社の中で、戦略と保有資産の関係が最も明快なのはアサヒだ。

ブランドを買う。

意味を磨く。

別の地域へ運ぶ。

高い価格で売れる状態をつくる。

その因果関係が、他社より見えやすい。

キリンは、技術を別の産業へ運ぶ

アサヒの経営を見たあとでキリンを見ると、同じ酒類会社とは思えないほど方向が違う。

キリンの事業には、ビール、清涼飲料、乳製品、健康食品、化粧品、バイオ素材、医薬品が並ぶ。

少し意地悪に見れば、「いろいろ買い集めた会社」にも見える。

だが、「発酵・バイオ技術」を中心に置くと、別の姿が浮かんでくる。
ビール醸造では、酵母や微生物を制御する。
そこで蓄積した技術を、アミノ酸、乳酸菌、機能性素材へ展開する。


その素材を飲料やサプリメントへ組み込む。

さらに、高度な研究、知的財産、臨床開発、規制対応が必要な医薬品へ接続する。

一つの研究基盤を、食品、健康、医薬という異なる市場で収益化する。
これがキリンの構造である。


アサヒが同じブランドを複数地域へ横展開するのに対し、キリンは同じ技術を複数産業へ縦展開する。

アサヒが地図の上を移動する会社なら、キリンは産業の階段を上っていく会社である。

FANCLの完全子会社化やBlackmoresの買収も、その流れで理解できる。

キリンには、研究開発力や機能性素材がある。
しかし、健康や美容に関心を持つ消費者へ、直接商品を販売する能力は十分ではなかった。


FANCLは、日本国内の通販、店舗、化粧品、健康食品、顧客基盤を持つ。

Blackmoresは、オーストラリアを起点に、アジア太平洋地域でブランドと流通網を持つ。

つまりキリンが買ったのは、健康食品の売上だけではない。

研究成果を消費者まで届けるための出口である。

キリンの構想は、技術、製品、顧客、地域を統合するヘルスサイエンス企業への転換だ。

ただし、この戦略は4社で最も難しい。

ビール会社と医薬品会社では、時間の流れが違う。

食品は数カ月単位で新商品を出せる。

医薬品の研究開発は、何年、場合によっては十年以上かかる。

健康食品は広告やブランドが重要だが、医薬品は臨床試験、規制、知財が中心になる。

FANCLの顧客基盤とキリンの乳酸菌技術が理論上つながっていても、消費者がその関係に価値を感じるとは限らない。

キリンの課題は、「技術的に関連している」と説明することではない。

異なる技術と事業を、十分な利益を生む一つの企業体系へ統合できるかである。

構想の射程は4社で最も遠い。

成功すれば、酒類企業という枠を超え、食・健康・医薬を横断する高い参入障壁をつくれる。

しかし、遠くへ行こうとする会社ほど、途中で道に迷う可能性も高い。

キリンは、最も大きな可能性と、最も重い証明責任を同時に抱えている。

サントリーは、まだ存在しない需要をつくる

サントリーを文化経営の会社と呼ぶことは間違いではない。

だが、それだけでは少し上品すぎる。

サントリーは、もっと実務的で、もっと貪欲な会社である。

人が、いつ、どこで、誰と、どのような気分で飲むのかを観察し、その生活の隙間へ新しい商品を差し込む。

サントリーの強さは、既にある市場でシェアを奪うことだけではない。

新しい飲み方をつくり、需要そのものを発生させることにある。

ウイスキー市場が低迷すれば、ハイボールという飲み方を再構築する。

BOSSでは、缶コーヒーを「働く人の時間」と結びつける。

天然水では、ただの透明な水に、森、水源、清潔さ、自然という意味を与える。

伊右衛門では、ペットボトル茶を京都、老舗、日本文化の物語へつなぐ。

山崎、白州、響では、味や酒齢だけでなく、日本的な職人性、美意識、希少性を価格へ変える。

普通のメーカーは、商品をつくり、広告し、販売する。

サントリーは、少し順番が違う。
まず、人々の生活時間を見る。

仕事の途中なのか。

食事の場なのか。

自宅で一人なのか。

誰かをもてなす時間なのか。

そこに、まだ言葉になっていない欲求を見つける。

意味を与える。

その意味に合う商品をつくる。

広告によって飲み方を教える。

最後に、それを習慣へ変える。

サントリーは商品を売るだけではない。

消費の儀礼をつくっている。

Beamの買収も、単なる米国市場への進出ではない。

山崎、白州、響は、日本の職人性、希少性、高級感に強い。

Jim BeamやMaker’s Markは、米国文化、大規模市場、バーボンの伝統を持つ。

両者を束ねることで、サントリーは原産地、価格帯、文化背景の異なるスピリッツ群を持つことになった。

アサヒとの差は、ここにある。

アサヒは、既に成立したブランドを世界の販売網へ載せることに強い。

サントリーは、商品を生活文化へ組み込み、市場やカテゴリー自体を広げることに強い。


アサヒがブランドの地理的拡張なら、サントリーは飲用場面の社会的拡張である。

サントリーには、非上場のサントリーホールディングスと、上場するサントリー食品インターナショナルが併存しているという特徴もある。

グループ全体では、創業家企業として長期的なブランド投資を続けられる。

一方、清涼飲料部門では資本市場の規律を受ける。

短期利益だけでは育てにくいウイスキーや文化ブランドを保有するうえで、この二重構造には合理性がある。

ただし、弱点も同じ場所にある。

「文化」「自然」「水」という物語が強いほど、個々の事業の投資効率は見えにくくなる。

ウイスキーの熟成にも長い時間がかかる。

需要予測を誤れば、供給不足も過剰在庫も、すぐには直せない。

それでも4社の中で、企業理念、商品、広告、飲用方法、文化活動が最も一貫しているのはサントリーである。

サントリーが持つ最大の能力は、ブランドを多く所有することではない。

人々の生活の中に、新しい消費習慣を定着させることだ。

サッポロは、過去を売るだけでは生き残れない

サッポロは、4社の中で最も大きな転換点に立っている。

かつてサッポロを「都市経営の会社」と見ることには合理性があった。

ヱビスビールの工場跡地が恵比寿ガーデンプレイスとなる。

ブランド名が駅名であり、地名でもある。

街の価値が高まることで、再びヱビスブランドの価値も上がる。

商品が土地を生む。

土地が街を生む。

街がブランドを強化する。

ブランドが不動産価値を高める。

これは他の酒類会社には、ほとんど見られない循環だった。

だが、現在のサッポロは、この構造をそのまま維持しようとしているわけではない。

不動産を切り離し、酒類ブランド企業として再構築しようとしている。


従来、不動産事業は安定利益を生み、酒類事業の弱さを補っていた。

しかし酒類会社の中に巨大な不動産資産があると、何の会社なのか分かりにくくなる。

酒類事業の収益力が低くても、不動産価値に隠れてしまう。

経営陣が酒類と不動産のどちらへ資本を配分すべきかも曖昧になる。

不動産分離は、その複雑さを解消する。

ただし、不動産を売れば、それだけで企業が強くなるわけではない。

建物や土地が現金に変わるだけだ。

重要なのは、その現金を次に何へ変えるかである。

酒類ブランドへ再投資するのか。

株主へ還元するのか。

海外企業を買収するのか。

財務改善に使うのか。

サッポロの未来は、資産を売る判断より、その後の資金配分によって決まる。

酒類側に残る差別化資産は、北海道、黒ラベル、ヱビスである。

黒ラベルには、都会的で、大人びた、静かな品質感がある。

ヱビスには、歴史、麦芽、正統性、恵比寿という実在する場所がある。

サッポロクラシックには、北海道限定という地域性と希少性がある。

これらの物語は、広告によって後からつくられたものではない。

企業史、工場、地域、都市形成が実際につながっている。

サッポロの強みは、地理と歴史を濃縮したブランドの真正性である。


だが、真正性は強い一方で、拡張しにくい。

北海道限定だからこそ、サッポロクラシックには価値がある。

全国や世界で大量販売すれば、その限定性は薄れる。

ヱビスも高い認知度を持つが、PeroniやJim Beamのように、世界各国へ容易に移植できるブランドではない。

サッポロの物語は深い。

だが、深い物語が、そのまま大きな市場になるとは限らない。

課題は歴史を守ることではない。

歴史を現代の利益成長へ変える、再現可能な仕組みをつくることである。

サッポロは今、過去を所有する会社から、過去を再び稼働させる会社へ変われるかを問われている。

4社は、どこへ進んでいるのか

4社の位置関係を考えるとき、二つの視点を置くと分かりやすい。

一つは、価値の源泉が「感性と物語」に近いか、「科学と機能」に近いか。

もう一つは、本業へ集中しているか、異なる産業へ広がっているかである。

最も科学・機能寄りで、最も多角化しているのがキリンだ。

酒類から健康食品、化粧品、バイオ、医薬まで進み、4社の中で「ビール会社」という定義から最も遠い。

最も感性・物語寄りで、人々の生活の多様な場面へ入り込んでいるのがサントリーである。

技術的共通性より、「豊かな生活文化」という世界観によって事業を結びつけている。

感性・物語寄りでありながら、ビールとプレミアムブランドへの集中度が高いのがアサヒだ。

非酒類事業も持つが、成長戦略の中心は明確にグローバルビールである。

同じく感性・物語寄りだが、地理的・歴史的な集中度が最も高いのがサッポロだ。

北海道、ヱビス、黒ラベルという強い物語を持つ一方、他社ほど多くの地域や産業へ展開できていない。

4社の違いを一文で表すなら、こうなる。

キリンは最も遠い産業へ広がり、サントリーは最も生活の奥へ入り、アサヒは最も世界を横断し、サッポロは最も深く土地に根を下ろしている。



戦略として最も完成しているのはどこか

戦略性は、計画が壮大かどうかでは決まらない。

保有資産と戦略が一致しているか。

競合が模倣しにくいか。

規模を拡大しても強みが薄まらないか。

投資が利益へ変換されたことを確認できるか。

この四つで見る必要がある。

現時点で最も完成度が高いのは、アサヒである。

アサヒが持つのは、プレミアムビールブランド、海外販売網、地域経営組織だ。

戦略も、プレミアム化、グローバルブランド、地域拡張へ集中している。

保有資産と戦略の距離が短い。

成果も、単価、販売量、海外比率、利益率などで比較的検証しやすい。

サントリーは、差別化の質ではアサヒ以上の可能性がある。

企業理念から商品、広告、文化活動まで一貫しており、他社が表面的に模倣しても同じものにはならない。

ただし、非上場グループであるため、資本効率や事業別採算を外部から検証しにくい。

キリンは、戦略的野心では最も大きい。

発酵・バイオを起点に、食品、健康、医薬を統合できれば、4社で最も高い参入障壁をつくれる。

しかし、事業が複雑であるため、本当に一つの企業体系として利益を生み出せるかは検証途上だ。

サッポロは、まだ旧構造の解体段階にいる。

不動産を切り離すことには合理性がある。

だが、それは新しい戦略の完成ではない。

売却後の資金配分と酒類事業の成長によって、初めて転換の成否が決まる。


強い差別化は、必ず弱点も連れてくる

消費者から見た差別化が最も強いのは、サントリーだ。

山崎、白州、響、天然水、BOSS、伊右衛門には、それぞれ商品を超えた世界観がある。

企業名とブランド群の間にも、自然、水、挑戦、生活文化という連続性がある。

企業内部の能力として最も模倣しにくいのは、キリンである。

発酵技術、機能性素材、医薬研究、健康食品、顧客基盤を一社内に持つ構造は、他社には容易に再現できない。

世界市場でのブランド展開能力が最も強いのは、アサヒだ。

複数のプレミアムビールを国境横断的に運用する実績は、日本の酒類会社の中で突出している。

歴史的真正性が最も強いのは、サッポロである。

北海道開拓、ヱビス、恵比寿の関係は、後から作られた広告上の設定ではない。

ただし、差別化が強いことと、成長性が高いことは同じではない。

サッポロの物語は深いが、拡張しにくい。

アサヒのブランドは拡張しやすいが、地域ごとの意味管理が必要になる。

キリンの技術は模倣困難だが、消費者には伝わりにくい。

サントリーの文化は強いが、投資採算を測りにくい。

強みは、弱点を消してくれるものではない。

強みとは、ある特定の方向へ企業を強く引っ張る力である。
だからこそ、その方向と反対側には必ず制約が生まれる。


4社は何を運んでいるのか

アサヒは、所有したブランドを世界へ運ぶ。

キリンは、蓄積した技術を異なる産業へ運ぶ。

サントリーは、作り出した意味を生活の中へ運ぶ。

サッポロは、歴史と土地に宿る意味を未来へ運ぼうとしている。

現時点で戦略の完成度が高いのはアサヒである。

差別化された世界観が最も強いのはサントリーだ。

将来の産業的な上昇余地が最も大きいのはキリンである。

企業変革の成否による振れ幅が最も大きいのはサッポロだ。

最も本業へ戦略が集中しているのがアサヒ。

最も遠い未来を取りに行っているのがキリン。

最も人間の生活を理解しているのがサントリー。

最も過去の資産を未来へ変換する必要があるのがサッポロである。

同じビール売り場で、4社は別の未来を売っている

もう一度、コンビニの酒類売り場へ戻ってみよう。

目の前に並んでいるのは、缶ビールや缶チューハイである。

しかし、その缶の背後には、それぞれ異なる経営構造が隠れている。

アサヒは、世界で通用するブランド運用能力を売っている。

キリンは、科学技術を健康価値へ変える可能性を売っている。

サントリーは、人々の生活に新しい習慣をつくる力を売っている。

サッポロは、歴史と土地が生んだ真正性を売っている。

消費者が手に取る一本は、単なる飲料に見える。

だが企業にとって、その一本は、長年積み上げてきたブランド、研究、文化、歴史を現金へ変換する装置である。

同じ棚に並んでいるからといって、同じ会社ではない。

むしろ商品が似ているからこそ、その背後にある思想と資産の違いが、企業の未来を決める。

酒類売り場は、4社のビールが競う場所ではない。

4社がそれぞれ別の未来を提示し、その未来のどれを消費者と市場が選ぶのかを競う場所なのである。

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