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『伝え方が9割』を10回読むより、重要な原則を3つだけ覚えて、今日10人に試した方がいい理由

『伝え方が9割』を10回読むより、今日10人に試した方がいい理由

「伝え方が9割」という本があります。

では、残りの1割は何なのでしょう。

私はこの問いを考えていて、少し逆説的な答えにたどり着きました。

残り1割は、「実装」ではないか。

そして実は、この1割がなければ、残りの9割もほとんど機能しません。


「知っている」と「できる」の間には、大きな断絶がある

コミュニケーションの本を読んで、

「なるほど。こう言えばいいのか」

と思った経験はないでしょうか。

ところが翌日、会社に行く。

上司から急な仕事を頼まれる。

断りたい。

でも、その瞬間になると本で読んだことは出てこない。

「今日は、ちょっと……」

結局、いつもと同じ言い方をしてしまう。

これは不思議なことではありません。

「知っている」と「できる」は、そもそも別の状態だからです。

コミュニケーション研究では、対人コミュニケーション能力は単なる知識ではなく、Knowledge(知識)、Skill(技能)、Motivation(動機)などから構成されると考えられてきました。

つまり、

方法を知っていることと、実際にその場で使えることは違う。

ここに、コミュニケーション本を読むときの大きな落とし穴があります。


本を10回読むより、3つだけ使ってみる

たとえば『伝え方が9割』から重要だと思った原則を3つだけ抜き出したとします。

全部を覚える必要はありません。

その3つを、今日会う10人に意識的に使ってみる。

すると、本を読んでいるだけでは発生しなかったものが生まれます。

相手の反応です。

言ってみる。

相手の顔を見る。

思った反応と違う。

言い方を少し変える。

もう一度、別の人に使う。

この瞬間、知識が「情報」から「能力」に変わり始めます。

構造は単純です。

知る → 使う → 反応を見る → 修正する → また使う
これを何度も回す。


重要なのは、「正しい言い方を一度で覚えること」ではありません。

フィードバックループを回すことです。

行動科学でも「やろうと思う」と「実際にやる」は違う

心理学には「intention–behavior gap」、つまり意図と行動のギャップという問題があります。

「運動しよう」

「勉強しよう」

「もっと人に話しかけよう」

そう思っていても、人は必ずしも行動しません。

そこで研究されてきたのが「implementation intention(実行意図)」です。

単に、

「もっと発言しよう」

と思うのではなく、

「会議で反対意見が出たら、一度質問する」

のように、

もしXが起きたら、Yをする

と行動まで決めておく。


GollwitzerとSheeranによる94件の研究を統合したメタ分析では、こうした実行意図が目標達成を促進する中〜大程度の効果を示しました。

つまり、

意志だけでは足りない。行動に変換する仕組みが必要なのです。

「残り1割」は、実は9割を起動するスイッチなのではないか

ここで『伝え方が9割』に戻ります。

もちろん「9割」という数字は、科学的に測定された割合というより、本のメッセージを強くするタイトル表現として理解するべきでしょう。

それでも、あえて残り1割を考えるなら面白い。

私はこう考えます。

伝え方が9割。残り1割は「実装」である。

実装とは、

知ることではありません。

実際に口を開く。

相手に使う。

反応を見る。

失敗する。

修正する。

また使う。

ここまで含めて「実装」です。

だから、この1割は単なる10%ではありません。

むしろ、

残り90%を現実世界につなぐスイッチです。

どれほど素晴らしい伝え方を知っていても、

実際に使わなければ、

100 × 0 = 0

です。

逆に、伝え方がまだ50点でも実際に使えば、
実行 → 反応 → 修正 → 再実行
という循環
が始まります。

50点が55点になり、60点になり、70点になっていく。

ここで初めて「知識」が「能力」に変わります。

読書の目的関数を変えてみる

これは『伝え方が9割』だけの話ではありません。

ビジネス書。

自己啓発書。

英語。

資格試験。

AIの使い方。

コミュニケーション。

私たちはつい、

「どれだけ知ったか」

を学習の成果だと思ってしまいます。

しかし、本当の目的関数が

「自分の能力を変えること」

なら、評価基準を変える必要
があります。

「何冊読んだか」ではない。

「何ページ覚えたか」でもない。

昨日までできなかった何が、今日できるようになったのか。

こちらを測った方がいい。

すると読書方法そのものが変わります。

一冊を完璧に理解してから動くのではなく、

一つ理解したら、一つ使う。

使ったら反応を見る。

修正する。

必要になったら、また本に戻る。


つまり、

読書 → 実践

という一方通行ではなく、

読書 ⇄ 実践
という往復運動にする。


AI時代には、この差がさらに大きくなる

そして、この問題は生成AIの登場によってさらに重要になっています。

知識を「知る」ためのコストは急激に下がりました。

わからないことがあればAIに聞けばいい。

本を要約することもできる。

重要概念を抽出することもできる。

練習問題を作らせることもできる。

つまり、これから希少になるのは、

知識へのアクセスそのものではありません。

その知識を、

自分の判断、言葉、身体、習慣、行動に変換できることです。

だからAI時代の学習では、

「何を知っているか」

以上に、

「何が実装されているか」
が重要になります。


『伝え方が9割』を10回読む。

それも悪くありません。

しかし、「伝える能力」を上げることが目的なら、

重要な原則を3つだけ覚えて、

今日10人に使ってみる。


そして、

反応を見る。修正する。もう一度使う。

その方が合理的な場合があります。

伝え方が9割。

では、残り1割は何か。

私はこう答えます。

残り1割は「実装」である。

そして皮肉なことに、

その1割がなければ、9割は永遠に知識のままである。

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