「着物 × タップ」見せたかったのはこれなんです!――レディ加賀
夕食を終えて、少しのんびり。
気軽に楽しめる映画が観たいなと思っていた時に、おすすめにあがってきたのが、この映画でした。
レディ加賀
<あらすじ>
樋口由香(小芝風花)は、加賀温泉にある老舗旅館「ひぐち」の一人娘。
小学校の時に見たタップダンスに魅了され、上京してタップダンサーを目指したものの現実はうまくはいかず、夢を諦めて実家に戻って女将修行を始めることに。
何をやっても不器用な由香は女将修行に苦戦するものの、持ち前の明るさとガッツで奮闘する。
そんななか、加賀温泉を盛り上げるためのプロジェクトが発足し、由香は新米女将たちを集めてタップダンスのイベントを開催することになるが……。
<出演>
小芝風花/松田るか/青木瞭/中村静香/八木アリサ/奈月セナ/
小野木里奈/水島麻理奈/佐藤藍子/篠井英介/森崎ウィン/檀れい
<スタッフ>
監督:雑賀俊朗
脚本:渡辺典子/雑賀俊朗
プロデュ-サー:村田徹/藤田修
あらすじを読んで、何となく『フラガール』みたいなやつかな?という印象でした。
レビューを見ると、賛否は半々ぐらい。
何はともあれ「まずは自分の目で確かめよう」と観てみました。
良かったところ
①タップダンスシーン
小芝風花さんのタップダンスはなかなか見ごたえがありました。
もともと私はタップダンスの知識が無いので、技の難易度もわからず、多少冷めた目で見ていたのですが、それでも一生懸命にやっていることは伝わりましたし、これを表現するために、積み上げてきた努力は感じられました。
②街並みや景色の映像はキレイ
これは見出しの通りですが、ときどき映し出される街並みや景色はとてもキレイでした。
加賀温泉郷の素晴らしさがよく描かれていたと思います。町おこし映画としての役割は十分果たせていた気がします。
だって、私は行ってみたくなりましたから。
③忘れた頃の女将ゼミ
イベント開催当日。いろんなトラブルが続々と巻き起こります。
舞台装置を積んだトラックが故障、返却予定のレンタル着物が返ってこなくて不足している。
舞台装置は、小学生の時の学芸会で背景を作ってくれた同級生に頼る。
さて着物をどうするか。
ここで、女将ゼミで特訓した「5分間での早着替え」が活かされます。
タップの練習が始まると、全く存在感がない女将ゼミ。
ここでその練習が繋がるという展開は良かった。
そんなことしなくても、それぞれ自前の着物を持ってくればいいのでは?と、思ったりもしましたが。
さらに、本番直前にステッキが折れて困ると、これも女将ゼミで習った通り「何事も応用」という教えに従い、ステッキをデッキブラシに置き換える。
「いや、何で人数分のデッキブラシを会場に持ってきていたんだ?」というヤボなツッコミをしてはいけません。
せっかくの特訓なので、やっぱり活かした方が良い。
で、デッキブラシを持って踊り始めると、床を磨く動きがあったり、振付が明らかにデッキブラシを前提にしたものだったので、さすがにちょっと笑いました。
気になったところ
①なぜタップダンス?
素朴な疑問として、「なぜタップダンスだったのか」がよくわからなかった。
樋口由香(小芝風花)は、タップダンスが好きで小学生の頃からやっていたから、タップに馴染みがあるとしても、フラダンスではダメな理由はない。
映画的には「フラダンスをやってしまったら、『フラガール』と一緒になっちゃうじゃん!だからダメ」って、明確な理由はあるんでしょうけど。
でも、だとすればタップダンスである必然性をもっと描いて欲しかった。
『フラガール』がフラダンスだった理由は、明確でした。
炭鉱閉山 → 代替としてハワイアンセンター建設 → だからフラダンス。
レディ加賀の場合は、月夜の晩に橋の上で踊る由香を見て“閃いた”だけなんですよね。
また、それをきっかけにしてタップダンスで盛り上げるとしても、女将を目指して女将ゼミナールに通っているみんながタップの練習に没頭するのは、どうなんだろう。
まずは女将修業に専念した方が良いじゃないのかな?という気がしました。
親友のあゆみ(松田るか)のお兄さんが言った「あんたがタップをやるのは勝手だが、妹はタップなんかやっている暇はない。早く女将になってもらわないと困るんだ」というセリフは「そりゃそうだろうな」という気がしました。
②女将という呼び名
これは全然映画の感想とは違うんですが、ちょっと気になったので書いておくと、『女将』というこの呼び名についてです。
映画の中では「女将」という言葉がごく自然に使われていて、伝統の象徴として肯定的に描かれています。
ただ、現実の社会では職業名のジェンダーレス化が進む中で、「女将」だけは昔のまま残っている。
それが良い悪いではなく、女将ゼミナールの生徒が全員女性だったのを見て、「あれ、ここだけは変わらないんだな」と、ふと感じました。
③よくある話
映画のストーリーとしては、どこかで聞いたことがあるような王道の展開ですが、それほど退屈することなく観られたのは、俳優さんたちの演技力と画の力のおかげだと思います。
ただ、最初の段階で「なぜタップなのか」を納得させてくれていたら、一つ一つのエピソードがもっと印象的になったし、そこで起こる困難の描き方も変わったのではないかと感じました。
何度も引き合いに出して申し訳ないですが、『フラガール』はまず「フラダンスをやる理由」が明確で、そのうえで時代性ゆえの偏見や、教える人がいない、暖房が整っていないといったリアルな課題が積み重なることで、観客が自然に共感できる。だからこそ、困難を乗り越える姿に感情移入できます。
レディ加賀は、この最初の段階が薄いため、家族や周囲の人の理解が得られない場面でも「そりゃそうだ、まず女将修業では?」と感じてしまい、いまいち共感できないまま淡々と映像を見ているだけになってしまいました。
④最大のピンチ?
騙されてお金がなくなってしまった。
イベントの開催が危ぶまれる状況になり、メンバーが話し合います。
すると由香は「まだやれることがあるはずです」と訴えます。
すると、女将ゼミ講師の白石朋子(佐藤藍子)は「加賀温泉には今までにも3回危機がありました。能登地震、東日本大震災、そしてコロナショック……。今までの危機を力を合わせて乗り越えてきたように、今回も、乗り越えられるかもしれない」とその意見に賛同します。
まあ、わかりやすい展開ですが、衣装、音響と舞台装置が手配できないということで困っているだけです。
これと能登地震を同列で語っても、ちょっと飛躍しすぎな気がします。
お兄さんにタップの練習を反対されたあゆみが「私、由香たちを助けたい。この街を救いたい。1日だけで良いから」って……。
うーーん。そこまでの話なのか。
⑤お客さん少なくない?
いよいよ始まる一大イベントですが、集まっている人数が少なくない?
座席は無くて、みんな芝生に座るのですが、それぞれけっこうなスキマを開けて座っています。
まあ、確かにこのくらいのスペースがあるとうれしいけど、もっとギチギチじゃないと、盛り上がっている感じがしない。
ざっと、2~300人くらい?
うちの近所のお祭りだってもう少し人が集まるんですけど……。
これはちょっと残念でした。
⑥早着替えは?
第1部のデッキブラシダンス。第2部はお面をつけたコメディタッチのダンスがあり、この第2部をやっている5分間の間に着物を変えて、第3部につなぐという計画でしたが、第2部を担当する2人が緊張でフリーズしてしまい、会場に来ていたよさこいソーランの方につないでもらうのですが、第3部が始まるころにはすっかり夜になっていました。
よさこいの方々、どれだけ踊ったんだろう?
ステージに向かう由香の背中。
その後姿を見守る同級生の松村康平(青木瞭)がつぶやく。
「背中に羽が生えている。精一杯飛んで来い。由香……」
このシーン。
あまりに唐突なので、思わず笑っちゃいました。
最後の盛り上がりに向けて、こういう画が欲しかったんでしょうね。きっと。それはよくわかる。
何にしろ、最初から最後まで、これだけわかりやすい王道のストーリー展開を、堂々とやっているのは逆にすごいなと感心しましたし、見終えた感想は、すがすがしい。
踊りを終えて、花火を見つめる由香の「最高」が、最高でした。
……あっ、けどこれ女将修業と関係あんの?
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