社長が教えてくれたこと9:夢を叶える地図
※この物語は、半分フィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
未来創造スタジオで配布されるオリジナルの手帳がある。
それには『夢を100個書き込むページ』が設けられているが、私の手帳は白紙のままだった。
なぜなら、私には夢を書くことへの抵抗があった。
バンド活動で夢を諦めた過去。夢を追うことの苦しさが、「夢なんて叶わない」という想いを心に刻み込んでいたのだ。
そんなある日、石田翔太が声をかけてきた。
「小泉さん、手帳に夢を書いてますか?」
石田の手帳には100個の夢が記されており、すでにそのうちの多くが叶ったという。
「どんな夢が叶ったの?」
小泉が尋ねると、石田は少し照れながら手帳を開いた。
「人事課で働きたい、採用に関わりたい、親を食事に連れて行きたい、彼女と遊園地に行きたい…、これ全部夢です。そして、去年の手帳を振り返ると、叶った夢が30個以上あるんですよ!」
石田の熱っぽい語りを聞きながらも、複雑な思いを抱えていた。
「彼女と遊園地に行くって…。それ夢なのか?」
その夜、静まり返った部屋で、私は手帳を開いた。
白いページが広がり、その空白がまるで過去の夢を諦めた自分を映しているように感じられた。
「やっぱり意味ないよな…」ため息が漏れる。
しかし、石田の熱心な話が頭をよぎる。
試しに1つだけ書いてみることにした。
『石田を一人前に育てる』
たった1行が浮かび上がる。
そして、その文字をじっと見つめると、石田の愛嬌のある笑顔と共に、次々と小さな目標が浮かび上がってきた。
「石田に、毎月おすすめの本を紹介する」
「石田がやりたいと言っていた社員研修の企画を通す」
「週に一度ランチに誘う」
そして、あいつはラーメンが好きだと言っていたから、「一緒にラーメンを食べに行く」
夢を書きながら、「100個の夢を書く」という行動は、「夢」という抽象的な概念を現実的なステップに落とし込むプロセスだと気が付いた。
ふと、かつてのバンド活動が頭をよぎる。
「プロになる夢なんて叶わなかった」。その苦い記憶は残っている。
それでも、こうして細かく分解された夢は、一つひとつ小さなゴールとして実現可能に思えた。
これなら、前に進める気がする。
「夢を書くことの意味は、こういうことだったのか…。」自分がずっと見過ごしてきた新たな一歩を、静かに見つけた気がした。
翌日、私は石田に声をかけた。
「石田、今日ラーメン食べに行かない?良いこと教えてもらったから、おごるよ。」
石田は驚き、「だったら、あそこ行きません?いつも並んでるんですけど」
私は心の中で笑みを浮かべた。
夢が、1つ叶った。
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