蓮華山麓(10)─夜行急行アルプス号
昭和60年当時、新宿発の中央線夜行急行アルプス号がまだ走っていた。わたしは静岡から東海道線に乗り、富士で身延線の最終に乗り換えて甲府まで行き深夜新宿からやってきたアルプス号にのった。
たしかその当時は塩嶺トンネルはまだ開いておらず、中央線は辰野回りだったと思うが、深夜の車窓はどこを走っているかわからない。また寒いくらいに冷房が効いて窓ガラスは結露していた。登山客はみな座席から床におりてゴロ寝していた。
薄明かるくなったころ松本に着く。大阪からの夜行急行ちくまに乗ってきた客も、そこでアルプスに乗ってくる。列車は大糸線を北上し朝5時過ぎ、信濃大町に着いた。
信濃大町駅からは立山黒部アルペンルートの入口である扇沢へむかう。路線バスが出ているが、駅前のタクシー会社の社員が慣れた口調で客をさばいていく。「四人相乗りすればバス代と同じだよ、どちら?扇沢?はいこっち、はい四人できた乗って乗って!」
私もタクシー相乗りで扇沢駅についた。いよいよ生まれて初めての北アルプス登山がはじまるのだ。
