【記者日記】万博工事費未払い問題・被害者と労働組合が万博協会に公開質問
かわすみかずみ
7月15日、万博工事費未払い被害者の会とNPO労働と人権サポートセンター・大阪の弁護士が万博協会に公開質問を行った。弁護士3人と被害者が参加し、万博協会からは持続可能性局の統括リーダーが出席した。
弁護士らは①人権的観点、⓶労働的観点、③建設業許可、の三つに絞って質問したという。被害者らは7月22日までに回答するよう求めた。万博協会は期限までの回答は難しいが文章で回答すると述べた。

被害者と弁護士が終了後に大阪府庁で会見を行った。未払い被害者のAさんは、「未払い問題はいまだに進んでいません。“民民”を覆したいと思います。突破口を開きたいと思っています」という。民民の問題ではないということをわかってほしいと述べた。今回はアンゴラパビリオンの例から問題を浮き彫りにした。
サポートセンター・大阪の代表理事の在間秀和弁護士は人権的観点から質問を行った。万博協会は2025年4月23日に「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会人権方針」(以下人権方針)を策定している。この中で、国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」や国際人権章典などをもとに、人権に配慮した万博運営を行うことを宣言している。
人権デューデリジェンスの実施、ステークホルダーとの対話、救済などが書かれている。人権デューデリジェンスとは、人権に関する負の影響について調査・把握し適切な手段を通じて是正し、その進捗及び結果について外部に開示する継続的なプロセスをいう。ステークホルダーとは、本事業にかかわる多くの企業や個人などの関係者をいう。関係者の声を聞き、事業をよりよくしていくことを目指す。
また、「救済」の項目では「博覧会事業によって人権への負の影響を引き起こす、または助長していることが明らかになった場合」は速やかに救済に取り組むことが明記されている。
万博工事費不払い問題は、万博協会が定めた人権方針に違反していないかを確認するため、在間弁護士は4つの質問を行っている。不払いの事実を認識していたかどうか、協会として調査を行ったかどうかなど、協会の具体的な行動について聞いている。
藤原 航弁護士はタイプXのガイドラインを根拠に、工事の監督責任について、協会に問う。アンゴラ館はタイプXで建てられている。タイプXは協会が建物を用意し、内外装を各国が行うものだった。そのため、協会は、①建築基準法などの国内法が守られているかの確認、⓶設計書などの確認と承認、③工事開始の際の許可権限、④工事中の規制などの強い権限があった。特に④では基本的にパビリオン工事は8時から18時までを基本とし、夜間や休日の作業については事前に協会に届け出る必要があると書かれている。
藤原弁護士は、協会がアンゴラパビリオンを含むタイプXの工事について、これだけの権限があるにも関わらず見過ごしていたことはガイドライン違反であると発言した。
藤原弁護士はこれらの点を踏まえ、労働現場への立ち入り検査を行ったかどうか、すべての作業員の労働時間を管理できていたのかなど4項目を質問している。
村角明彦弁護士は、建設業許可の観点から協会に質問を行った。アンゴラ館では元請け企業がどこなのかがわからない状況が続いている。6月4日の大石あきこ衆議院議員の質問の中では、プロモーションマネージャー(PM)としてNOEジャパン社を選定し、元請けを株式会社大鵬と回答した。だが、Aさんの証言では、大鵬は二次下請けの吉拓から請け負い契約をもらったという。また、元請けではないNOEジャパンはアンゴラ国政府から工事費を受け取っている。実際の工事費の流れや工事体系が、回答と違っていることに弁護士らは首をかしげている。
建設業法では、工事を行う際に一般建設業は都道府県に、特定建設業は国土交通省大臣に届け出をしないといけない。アンゴラパビリオンでは、NOEジャパン(PM)、吉拓(PM)、一六八建設(二次下請け)の3社が建設業登録を行っていなかった。そのため、Aさんらは労災保険にも入れない状況だった(工事において労災保険は元請けのところで入ることになっている)。
これらを踏まえて村角弁護士は、工事の前に、建設業登録を確認したかどうか、法令遵守の確認を行う部署があるのかどうかなど3点を協会に聞いている。
記者からは、今回の公開質問によって早急な立て替えに結びつくのか? という質問があった。弁護士らは、公開質問により、広く事実を知らせるとともに、協会に自覚を持ってもらうことを目的とした、と答えた。また、協会が立派な「人権方針」を作っていながら、果たして機能していたのか、実際に行動できていたのかを問いたいという。
Aさんは、「協会が工事中に各パビリオンを見回り、状況把握を行って対応していれば、こんなことにはならなかったはずだ。一般の工事でこんなことはありえない」という。
6月26日の大阪府定例会見で、吉村洋文知事は「民間での契約について税金で建て替えることは難しいが、できるだけ寄り添っていきたい」と語った。弁護士らは、今後も対話を続け、早急な救済を行ってほしいと言った。
弁護士らは協会の各理事にも個別に公開質問状を郵送する予定だ。回答が出た場合は再度、公表するという。
