相続した広い土地の売却を先送りした実例|待つ前に比べたい手取り額と控除期限
相続した広い土地について、売るか待つかの判断が先送りされました。
その間に税制上の期限を過ぎ、記事執筆時点で想定される売却価格も、当初より下がっています。
この事例からお伝えしたいのは、相続不動産を今売るか待つかは、表面上の売却価格だけでは判断できないということです。税金や売却費用、保有中の負担を差し引いた手取り額と、利用できる可能性がある制度の期限まで比べる必要があります。
※個人や不動産が特定されないよう、地域、時期、価格など一部の情報は伏せています。
遺贈で取得する不動産の相談でした
知人を通じて、遺贈で不動産を取得する予定のAさんの奥様を紹介されました。
亡くなった方には配偶者も子どももおらず、公正証書遺言により、Aさんと姉のBさんが不動産を取得する予定でした。
まず司法書士へ、相続・遺贈に関する登記を依頼しました。登記と並行して、私から売却までの流れを具体的に説明し、現況測量についても、登記名義人の承諾を得て進められるよう準備しました。
Bさんは、売却に関することをAさんへ任せる意向でした。
実務上の連絡窓口はAさんの奥様でした。奥様は早めの売却を希望していましたが、最終決定者であるAさんとは考えが一致していませんでした。
つまり、連絡を取る人と、最終的に売るかどうかを決める人が異なる状態でした。
広い土地のため、複数社へ買取価格を確認しました
対象は敷地面積が広く、複数区画への分割が検討される規模の土地でした。
一般の個人が一括で購入するには面積が広く、総額も大きくなるため、購入できる人が限られます。
そこで、早期かつ確実な売却方法も検討するため、複数の不動産会社へ買取価格の算出を依頼しました。
買取価格は、不動産会社が購入後の造成や分譲、販売経費、事業上のリスクなどを考慮して提示する金額です。一般の買主を探す仲介の売出価格とは、性質が異なります。
各社から提示された金額を比較し、その時点で最も高かった買取価格をAさんへ伝えました。
これは、将来を含む絶対的な最高価格でも、市場価格の上限でもありません。ただ、当時の買取市場を複数社で比較した結果でした。
Aさんは提示額を見て、「こんなに安いのか」という趣旨の発言をしました。
少しでも高く売りたいと考えるのは自然なことです。Aさんが値上がりへの期待を明言したわけではありませんが、現在の条件に納得できず、待てば高くなる可能性を考えていたのかもしれません。
特例の可能性と期限を説明しました
税金については、私から国税局へ確認しました。
Aさんたちが包括受遺者に該当し、家屋の状態、相続後の利用状況、売却時期、売却代金など、ほかの要件も満たせば、「被相続人の居住用財産に係る特別控除」の対象になり得ることを説明しました。
いわゆる「空き家の3,000万円控除」ですが、3,000万円が手元に残る制度でも、税金が3,000万円減る制度でもありません。
一定の要件を満たした場合に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。実際の税負担への影響は、取得費、譲渡費用、所有期間、税率、共有者数などによって異なります。
また、包括受遺者であるだけで自動的に適用される制度ではありません。
私は、特例を利用できる可能性、期限、期限を過ぎるリスクを具体的に説明しました。その後も、期限を忘れないよう定期的にお知らせしています。
最終的な適用可否と税額は、税務署や税理士へ確認する必要があります。
「税金がかかった話は聞いたことがない」
Aさんは、
「知り合いが不動産を売却した話はよく聞くが、税金がかかったという話は聞いたことがない」
という趣旨の話もしていました。
しかし、知人から税金の話を聞いていないことと、実際に税金がかからないことは別です。
売却した人が税金の話をしていないだけかもしれません。取得費や利用した制度など、前提条件がAさんと異なる可能性もあります。
そのため私は、税金がかからないと考えるのであれば、ご自身でも税務署または税理士へ確認するよう伝えました。
その後、Aさんから、税務署や税理士へ確認したとの連絡はありませんでした。
「期限まで余裕がある」と判断が先送りされました
Aさんは次第に、
「仕事が忙しい」
「控除期限まで余裕があるので、今は仕事に集中したい」
と話すようになり、売却の判断を先送りしました。
仕事や家庭を優先し、今は売らないと判断すること自体は問題ではありません。
知人からの紹介だったこともあり、私はしつこく営業して売却を迫らず、判断を待ちました。ただし、制度の期限については定期的に通知しました。
それでも期限内に売却は行われず、記事執筆時点でも、不動産は売却されないまま保有が続いています。
当初売却を検討していた頃と比べ、現在想定される価格も下がっています。
価格が下がった原因を、判断の先送りだけに限定することはできません。周辺相場、市場環境、土地の状態など、複数の要因が影響します。
また、期限内に売却していれば、必ず特例が適用されたともいえません。
ただし、期限内であれば、ほかの要件を含めて適用可能性を確認する余地がありました。
待つなら、売値ではなく手取り額を比べる
高く売れるまで待つこと自体を否定するつもりはありません。
土地の需要や周辺環境によっては、待つことが有利になる場合もあります。
ただし、比較すべきなのは売却価格だけではありません。
現在売却した場合の価格から、
・売却に必要な費用
・売却時の税金
・測量や残置物処分などの費用
を差し引いた手取り額を確認します。
待つ場合は、
・固定資産税
・草刈りや清掃などの管理費
・建物や設備の修繕費
・制度の期限を過ぎた場合に増える可能性がある税負担
・保有を続ける時間と手間
も考える必要があります。
確認したいのは、想定される値上がりによって増える手取り額が、税負担の変化や保有中の費用・リスクを上回るのかという点です。
複数社を比較して価格の根拠を確認しても、税金、費用、期限までつなげて考えなければ、待つことが有利とは限りません。
記事を閉じた後に確認してほしい3つ
相続不動産について、今日すぐ売ると決める必要はありません。
ただし、判断を先送りする前に、次の3つは確認してください。
税務署または税理士へ確認する
自分の不動産について、制度の適用可能性、期限、売却時の税負担を確認します。不動産会社へ価格の根拠と手取りを確認する
仲介と買取それぞれの価格だけでなく、売却費用、税引前の手取り、想定期間、価格の根拠を確認します。税額の最終判断は税理士などへ確認してください。家族内の役割と次回判断日を決める
連絡窓口、最終決定者、共有者の意見をまとめる人を明確にし、「半年後に再査定する」など、次に判断する日を決めます。
売らないという判断もあります。
今は売らず、一定期間後に改めて検討する選択もあります。
ただし、いつまでも決めない状態と、期限や費用を確認したうえで待つ判断は同じではありません。
家族内の連絡窓口と最終決定者が異なる場合や、期限は分かっていても話が進まない場合は、売るかどうかを決める前に、価格、期限、家族の意思決定を整理する相談もできます。
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