ストップ 【ショートショート】
あぁ早く大人になりたいなぁ。
こんなつんつるてんじゃ恥ずかしい。
早く大人のナニを手に入れたい。
僕はいつもそう夢想する。
具体的に大人になったらナニがしたいのかはわからない。
ただ漠然と大人のナニに憧れる。
体をはやく成長させる薬とかないのかな。
僕が発明しようか。
でも、そんな大発明をする頃にはきっと僕は大人のナニになっているだろうから意味ないか。
僕はこうして大人のナニに思いを馳せながら下校していた。
この小学校とも長い付き合いだ。
僕のナニは少しでも成長しただろうか。
僕はこころの中で自分のナニに語りかける。
返事はない。
この時、僕はこころの内側 というか下側に意識がいっていたんだ。
だから赤信号になっていることに気が付かなかった。
キキーッ!という大きな音を聞いたような気がした。
……眩しい。
僕は眩しくて目をさました。
とても長い時間寝ていたような感覚がある。
体が重い。
まるで自分の体じゃないみたいだ。
僕は知らない部屋で寝ていた。
どうやら病院のようだ。
ベッドの横には見覚えのあるふたりが驚いたような表情を浮かべて僕を見ている。
女性の方は泣き崩れている。
男性の方は医者を呼んでくるといって慌てて部屋から出ていった。
僕は喋れなかった。
喋り方を忘れてしまったような変な感覚だった。
僕が口を開けたり閉めたりパクパクしていると、さっきの男性が医者を連れて帰ってきた。
医者も僕を見て驚いている。
奇跡だとか信じられないとかブツブツつぶやいている。
僕は口をパクパクすることしかできない。
なにせ体が重い。
医者が僕に色々と質問をして、色々と説明をした。
僕は交通事故にあって長い間、昏睡状態という状態だったらしい。
ちなみにベッドの横にいたふたりは僕のパパとママらしい。
こんなおじいさんとおばあさんだっけ?
僕が不思議そうに両親を見ていると、医者は言いにくそうにモゴモゴしながら口を開いた。
医者が言うには、僕は20年間も昏睡状態で寝たきりだったらしい。
そりゃ喋り方も忘れるよね。
僕は冷静だった。
だって全然実感がないもの。
でも僕ははたと気がついた。
20年もあれば僕はきっと大人になっているはずだ。
だから体が重いのだ。
そして僕は事故に遭うまえにしていた夢想を思い出した。
そうだコッチも大人になっているはずだ。
僕は渾身の力で重い腕を動かし、布団をどかしズボンを引き上げナニを確認した。
そこにあったのはつんつるてんだった。
僕はそのまま固まる。
全然大人になってない。
どうして。
僕の驚愕している表情をみて医者が説明する。
医者が言うには、僕はずっと昏睡状態だったから第二次性徴が起こらずに体だけ成長してしまった。
だからナニはつんつるてんのかわいいままなのだそう。
そしてもう第二次性徴は二度と訪れないとも言い添えた。
僕は一生大人のナニにはなれない。
僕はあまりにも残酷な事実に強いショックを受け、意識が遠のいた。
意識を失う前に医者が大声で、心停止がどうのと騒いでいる。
でも、つんつるてんの僕にはもうどうでもいいことだった。
あぁ大人になりたかったなぁ。
