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うちの子ケンタウロスかも 【ショートショート】

「うちの子ケンタウロスかも」

行きつけの喫茶店にて 向いに座るママ友がそう呟いた。
ママ友は少しため息交じりで かなり悩んでいるようすだ。

私は思案する。
ケンタウロスってあの…?
上半身が人間で下半身が馬のアレよね?

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いや、でもこないだ会った時 下半身は人間だったと思うけど。
アレって後天的になるものなの?
勝手に先天的なものだと思ってたわ。
うちの子は大丈夫かしら。
まさか感染したしはしないわよね…?


「ケンタウロスなんて聞いたことなかったけど、あれは間違いなくケンタウロスね。それ以外に形容のしようがないもの」


ママ友は力なくそう言いながらホットミルクティーを飲む。


「ケンタウロスなんて怖いわね〜
ちなみにさ…それって伝染うつるのかな」


私はそれとなく聞いてみた。


「ん〜一緒にいたらあの雰囲気に呑まれて伝染るって言えなくもないかもね〜」


ママ友は軽い調子で言う。

やばい。
伝染るんならママ友も危ない。
そうしたら私もうちの子もケンタウロスになっちゃう可能性があるってことよね。

治療法はあるのかしら
服はどうするのかしら 
馬の部分は裸よねきっと
そしたらアレも丸出しってことよね
そもそも両手に加えて前足と後ろ足で計6本も操れるかしら
トイレの個室はきっと入れないわよね
野糞なのよねきっと
そうだとしてどうやってお尻を拭くのかしら
尻尾でパタパタするのかしら
ひづめの手入れはどこにお願いしたらいいのかしら背中がふたつあるってどんな気持ちかしら
子どもは「射手座かよ」とか馬鹿にされて不登校になるかも
自転車も車も乗れないわね
でも早くは走れそうね
子どもはニンジンが好きになっていいかもね

ダメダメ。
完全にケンタウロスになる前提の思考になっちゃってる。

話題を変えないと。
ケンタウロスから離れないと…


「そ、そういえば近くのKFC閉店しちゃったわね〜」


私は苦し紛れに世間話を挟んだ。
 

「そうなよ!それがケンタウロスの原因なのよ〜!」


ママ友はそう言い放つと 憎い という顔をしてショートケーキを頬張った。

ダメ。
なんだかわからないけれど地雷を踏んでしまったようね。
それにしてもKFCの閉店でケンタウロスになるってのはどういうことなのかしら。
そんな条件なら感染するまでもなく我が家も危ういじゃない。

でもママ友は今のところ馬の下半身ではない。
少し馬面だけどたぶんそれは関係ない…はず。
ケンタウロスになる条件を見つけないと…家族を守るために。


「ね、ねぇケンタウロスになったらどんな感じになっちゃうの?やっぱ驚くわよね」


私は恐る恐る聞いてみる。


「んー私には気持ちがわからないけれど、ちょっと気味が悪いよね。ないもんはしょーがないって思うんだけどねぇ私は」


ママ友はそう言いながらショートケーキを平らげた。

ないものはしょーがないって…
人間の下半身のことよね。
ママ友はかなり割り切った性格なのね。
私なら人間の下半身に未練たらたらだわきっと。


「ケンタウロスを治すには結局はケンタにいくしかないのよね〜。明日隣町のケンタに連れていくわ」


ママ友はさらりと治療法を教えてくれた。
しかし訳が分からない。
それにしてもKFCのことをケンタって呼ぶの好きになれないわ。


「ど、どうしてKFCにいくとケンタウロスが治るの?」


私は意を決して聞いてみる。
ママ友はキョトンとした顔で私を見ている。


「もしかしてあなたさっきからケンタウロスって言ってる?あの下半身馬のケンタウロス?」


ママ友は笑いを堪えるのに必死の様子だ。
こちらの気も知らないで失礼な人ね。


「ケンタウロスじゃないわよ、ケンタ・ロスよ」
「ケンタが閉店したからロスってるのよ」
「ただ食べたいだけのワガママよ」
「ケンタウロスなんてあなたそんなわけないじゃない」


ママ友はケタケタ笑いながら説明する。
私は恥ずかしさのあまりママ友に「馬面ッ」と言い放ちその場から逃げ出してしまった。

そして ケンタウロスは実在するという既成事実を作るために、うちの子を牧場に連れていった。

うちの子は大喜び。
そっとうしろからしのびより

ひとりといっとうを

いっとうりょうだんして

つなぎあわせればほら…

ふふふ。

うちの子ケンタウロスかも。


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